野中章弘×綿井健陽 対談(2)
なぜ自衛隊はイラクに派遣されるのか。
米軍のバグダッド空爆開始から現地で取材を続けたジャーナリストが派兵の論理を撃つ!

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日の丸の旗の下で銃を持った兵士が「自衛のために来ている」と言っても外国では通用しません。向こうではオランダ軍やアメリカ軍と同じく、日本軍は占領軍のひとつとしか認識されません。もちろん、サマワの人たちも最初から極端な反発をすることはないですよ。歓迎式典もやるだろうし、日の丸の旗くらい振るかもしれません。しかし、3日、1週間、1カ月と経つうちに彼らの態度も変わってきます。

住民は自衛隊がやるという給水なんて望んでいません。老朽化した水道管をなおしたり、電気の配線を修理する民間レベルの技術が必要なんです。日本の企業が来ないと知ったとき、抱いていた期待と幻想が崩れ、怒りの矛先は軍隊に向きますよ。4月9日にバグダッドが陥落して喜んだ人たちも、数日後にはアメリカ軍の前でデモを始めました。それまで100のいいことをしていても、住民に向けて発砲したり、死傷者を出せば住民の感情はすぐに変わります。

*野中 日本がどう理屈をこねようと、イラクの人たちには新たな占領軍が参加するということだし、武器・弾薬を輸送しなくても、武装した兵隊を運んだら自衛隊が襲撃の対象になっても不思議はない。

*綿井 物資を輸送する移動中に襲撃される確率は極めて高いです。
自分が自衛隊員、もしくは自分の父親や息子が自衛隊員だとイメージしてほしい。軍服を着て、銃を持って日の丸をかかげてイラクの地に立っている姿です。もしかすると住民に銃を向け、また向けられるかもしれない自分の姿や父親の姿を思い描いても堪えられるのであれば、賛成してもいいかもしれません。しかし、そうでない人は徹底的に反対したほうがいいでしょう。

ニュース・ステーションに出演したとき、「(自衛隊が行かないとするなら)民間人の安全は誰が守るのか」ということを訊かれました。そのときはうまく説明できませんでしたが、民間人を安全に送り出しても大丈夫な体制や環境をつくるのが、政治の役割じゃないでしょうか。銃や武器で安全を守るという発想がアメリカ式なんです。いまイラクの人たちは米軍も警察も信じられないから、自分たちで銃を持って武装するしか方法がありません。

日本はいまのアメリカの占領政策を変えていくような行動をしていくべきです。イラクの人たちは外国の軍隊にこれ以上来てほしくはない。治安を回復するために軍隊を送ってくれという発想をしている人は、イラクの中できわめて少数です。むしろ、治安を回復させるために米軍には早く撤退してほしいと望んでいます。そこが日本の政治家が考えていることとは違うのです。

*野中 日本人は武力や軍事力というものを実感する機会があまりにも少ないため、その存在がどれくらいの緊張感を生むのかわかっていないよね。武力で抑えれば反発する勢力が出てきて軋轢が生まれる。抵抗勢力は圧倒的な武力の差がないかぎり、抑えきれないわけで、そこがわかっていない。
自衛隊を派遣することで、その地域の緊張が増すことはあっても、緩和されることはないよね。
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