◆密輸物流の一大拠点
鴨緑江を挟んだ両都市でこれほど密輸が活発になったのは、他にも理由がある。それは鴨緑江上流の川幅が狭くて往来が簡単だという地理的条件に加え、恵山市が、北朝鮮の他地域への物流の拠点の一つになっているからだ。前述したとおり、国内の生産活動の大半がストップしている北朝鮮では、「全国の市場に並んでいるモノの90%以上は中国製品」(北朝鮮の密輸屋A氏ほか複数が証言)という状況だ。

この中国製品は正規・非正規を問わず、1400キロに及ぶ国境のどこかから入ってくる。豆満江側では羅先、会寧、茂山がその出入り口となり、交通の要衝・清津が物流拠点になっている。鴨緑江側では、新義州、満浦、恵山が出入り口兼物流拠点だ。そのうちでも恵山は、国境の川が浅く、対岸の中国側長白が大きな街であるため、もっとも物資の搬入が容易な場所だ。そのため恵山は、北朝鮮最大の密輸都市であり、中国製品の卸売り拠点」になったのだ。

こうして、密輸と国内物流の拠点となった恵山は
「平均すれば今や平壌を凌いで北朝鮮でもっとも生活水準が高いだろう。密輸や卸商売で成功した連中はドルをしこたま溜め込んでいる。テレビやビデオも彼らが買っていくのだ」と、北朝鮮に運ばれていくAV機器の買い手をA氏は、こう説明した。B氏は密輸の横行について、ニヤニヤしながら揶揄する。
「向かいの長白県が香港なら、恵山市は北朝鮮の『経済特区』のようなものだ。北朝鮮が鎖国を続けている限り儲かるよ」(次回に続く)

 
食器、バケツ、ひしゃくなどの安いプラスチック製品も中国製が市場を席巻   雑貨を売る女性たちは日焼けに気を使う余裕のある人も。

 
板塀にも商品を陳列。掛け時計も中国製。   一足約100円の中国製の布靴が北朝鮮ではもっともポピュラー。

 

写真はいずれも03年9月、両江道恵山市にて 安哲氏撮影(RENK提供)

 

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