040123_01.jpg闇経済によって貧富の差が急激に拡大した。農村は政府の収奪により、瀕死の状態。専横する政府や軍が、経済窒息に拍車をかけている。

 

◆闇経済によって拡大する貧富の差
闇物流をコントロールしようという金正日の新経済政策は失敗に終ったが、北朝鮮の庶民はこれを大歓迎しているという。
「商売が自由になったのは大きい。市場税一日一人20ウォンを払えば自由に商売ができる(15ウォンと証言する人もいた)。ただし、勤め先を持つ男は市場に出られなくなっている。退勤してからは商売人に卸しはできる。私は中国から密輸で仕入れたタバコや時計を売っている。今、私の月給は2,000ウォン(約280円)。それも滞っているが、密輸と卸商売で、なかなかいい家を買った。値段は50万ウォン(約70000円)だった(C氏によると15畳ぐらい部屋が2つと台所の平屋。アパートは水道が上がらず人気がないという。)」
道路工事に動員された女性たち。機械の老朽化と燃料難で、作業はほとんど人力。給料は出るという。(安哲撮影 RENK提供)

道路工事に動員された女性たち。機械の老朽化と燃料難で、作業はほとんど人力。給料は出るという。(安哲撮影 RENK提供)

ホクホク顔でこう証言するC氏は、さしずめ現時点での北朝鮮の「勝ち組み」だといえるかもしれない。だが、商行為の解禁で生活が向上した人ばかりではないようだ。

「とにかくこの1年で、見る見る間に貧富の格差が広がった。たった100ウォン(約14円)がなくてトウモロコシの粥をすすっている人間がいる一方、米ドルを何万ドルも溜め込んでいる高級幹部連中もいる。商売のチャンスのある都市労働者は商売で一息つけたけれど、今は農村が大変なことになっている」C氏はこう言うのだった。

◆収奪により疲弊する農村「去るも地獄、残るも地獄」
03年も9月に入って脱北して来る人がまた増え始めている。以前は少なかった農民の割合が増えているのが特徴だ。
咸鏡北道恩徳郡の協同農場員Dさん(50代女性)の証言。

恵山市内の市場で、お母さんの商売を手伝い荷車を押す子供。市場経済の増殖は庶民に歓迎される一方、急速に貧富の格差を拡げている。(安哲撮影 RENK提供)

「もう目の前が真っ暗です。02年は不作だったことに加え、やれ軍糧米だ、人民軍に支援を出せといって分配が減らされ、秋の収穫量の50%を国家に持っていかれました。以前は国家が肥料や農薬を供給していましたが、「経済管理改善措置」が実施されてからは、農場で金を出して買わなければなりません。

おまけに「小土地」(個人が勝手に開墾した農地)にかかる税金も厳しく取り立てられます。カネなんてないから、誰も払えず、結局、収穫から差っ引かれたんです。この一年働いて何にも残りませんでした。

服や石鹸を買おうにも、農村には現金化できるのは収穫物しかない。それを50%も持っていかれたらやっていけない。家族が病気にでもなったら薬も買えず、おしまいです。私のいる村でも老人や子供で餓死・病死する人が出始めました」

300万人の死者を出したと言われる95-98年の大飢饉では、犠牲者のほとんどは非農業の都市の住人だった。配給と給料がいっせいにストップし、耕作すべき土地もなく食糧にアクセスができなくなったからだった。その当時、農村では収穫物を隠匿したり、「小土地」の生産物もあって凌ぐことができたのだという。
「皆が露骨に不満を口にするようになりました。金日成首領様の生きてた時はまだましだった。金正日将軍になって悪くなる一方だ。これも軍隊だけを重視するからだと」

このように言うDさんは、3人の子供と病弱な夫を北朝鮮に抱えていた。ひとりで中国に脱北して来たのは、家族で中国に潜伏できるかどうかを調べるためだった。中国の北朝鮮難民に対する取り締まりは相変わらず厳しい。Dさんにとって祖国・北朝鮮は、<去るも地獄、残るも地獄>という状況だ。
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