第8回 新たな戦没者と遺族を出してはいけない

今、日本は有事関連7法案によって官民あげて戦争協力体制にむかいつつある。第二次大戦で親族を失った遺族の思いを聞く。

有事法制と戦没船員
今国会には有事関連7法案が提出される。米軍行動円滑化法案に象徴されるように、有事法制が周辺事態法とリンクして、アメリカが起こす戦争に日本が官民あげて協力する危険性については前回ふれた。
このような現状に危機感をつのらせているのが、海運、航空、港湾など輸送運輸関係の労働者である。かれらは、周辺事態法や有事法制によって、米軍や自衛隊の軍事行動への後方支援に従事させられ、戦争への加担を強いられるおそれがある。

そのため、輸送運輸関係の労働組合は、戦争の加害者にも被害者にもならないとの決意 から、周辺事態法や有事法制などに一貫して反対してきた。
神奈川県横須賀市の観音崎に、戦没船員の碑がある。東京湾の出入り口にあたり、多くの船が行き交う浦賀水道を目の下に、そして遠く太平洋の水平線を望む丘の上、黒御影石の碑には「安らかにねむれ わが友よ 波静かなれとこしえに」と刻まれている。

ここには、第二次大戦中の戦没船員6万余人の名簿が安置されている。
戦没した船員たちは軍人ではなく、軍に船もろとも徴用されて兵員や物資の輸送に従事させられた民間の商船や漁船などの乗組員だ。輸送船団は日本近海から太平洋、東シナ海、南シナ海、インド洋にかけての広大な海域を航行したが、次々と米軍の航空機や潜水艦などに攻撃されて沈没し、2500余隻、約850万総トンの船舶が失われた。

動員された船員10数万人のうち6万数千人が亡くなっている。その死亡率は約43パーセントで、陸軍の約20パーセント、海軍の約16パーセントと比べて驚くべき高さであり、兵站線がいかに危険にさらされるかを物語っている。

戦没船員の追悼式は毎年5月半ばに開かれている。私は5年前、この追悼式に参列したことがある。およそ500人の遺族、関係者が、波間に消えた亡き人びとを偲ぶとともに、船員が二度と戦火の海を航くことのないよう、海の平和と安全を祈り、黙祷をささげ、献花した。降りそそぐ陽の下、ハンカチでそっと目頭を押さえる喪服姿の年老いた女性らの姿がそこここに見られた。
戦争をする国になってゆく日本でいいのか?! 吉田敏浩
第8回 新たな戦没者と遺族を出してはいけない
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