吉田敏浩×新倉裕史(9)
「有事」の声に気おされず、戦争協力を拒否しよう。平時から地域条例による戦争協力拒否の前例を作り、戦争協力法案に対抗するための下地とする。

《戦争協力をいかに拒否するか》

吉田 有事関連7法案が国会で審議されています。日本をアメリカとともに戦争のできる国にするための制度づくりが有事法制の真の狙いです。
しかし、その危険な本質を共産党や社民党がいくら追及しても、政府は論点をすり替えてばかりです。必要な情報も公開せず、まともに議論に応じようともしません。政府・与党は民主党を抱き込んで、国会における数の力で押し切ろうとしています。

有事3法やイラク特措法でもそうでしたが、危険な法案にいくら論理的に反対しても、結局数の力によって成立してしまうという現状があります。
もちろん法案には反対しなければなりません。ただ、現状を踏まえたうえで考えると、今後考えなくてはならないことは、有事法制ができてもそれに対して不服従を通し、戦争協力を迫られてもそれを拒否するにはどうすればいいのか、ということだと思います。それが有事法制を発動させない、戦争をさせないことにもつながってくるのではないでしょか。

新倉さんたち「非核市民宣言運動・ヨコスカ」「ヨコスカ平和船団」は、このテーマについて『「有事3法」の空洞化のために』…自治体の平和力と非協力を考える、という小冊子(2003年8月)を発行しています。有事法制もあくまで港湾法や地方自治法などと横並びの個別法のひとつだという視点から、拒否できる・非協力できる根拠と論理と方法を編み出そうとされているわけです。

武力攻撃事態法では、政府は自治体(地方公共団体)の長に対して有事の際の対処措置を実施するよう指示できると定められています。また周辺事態法では、必要な協力を求めることができるとされています。
つまり、自治体を有事=戦時体制の手足として使おうとする意図が政府にはあるのです。しかし、自治体や自治体職員がこのような戦争協力に納得いかなければ拒否できるということですよね。

新倉 1999年に周辺事態法ができたときにも、「強制力はないが、実際は自治体が協力を拒否するのは困難だ」と、マスコミや研究者などの間で言われていました。
当の自治体は全国基地協議会などいろんな場や機会を通じて、日本政府との間で多くの質疑応答をおこなっていました。周辺事態法に定められた自治体の協力について不審な点を質したわけです。そのやりとりは議事録が作られていますが、それを読むと、自治体の質問に対する政府の回答からは周辺事態法の限界が見えてきます。

たとえば、「周辺事態法など法律の解釈に関して政府と自治体で食い違った場合はどうするのか」という質問をした自治体がありました。政府は「司法の手にゆだねる」と答えています。つまり、それは裁判所が決着することで、政府の解釈をごり押しすることはできないと言っているんです。

ある自治体は、「条例によって協力の求めを拒否することは可能か」と訊いていますが、政府は「可能だ」と答えています。現在、函館や小樽では、非核平和条例を制定しようという市民と労組と市議会議員による運動がありますが、自治体で「管理する施設(港湾や空港など)を戦争協力のためには使わせない」という非核平和条例ができれば、政府はその条例に従わなければいけないと答えているんです。

周辺事態法や有事法を作って、あれもできる、これもできると政府はしたいわけです。しかし、現にできた法律を冷静に読み込むと、政府の思惑どおりのものにはできていません。
政府の思惑どおりにできていないということは、反対する側に状況を押し戻す立脚点が残っているということなんです。だから、ここに生じているずれを重要なものとして僕らは見たいんです。そのずれのなかにこそ手がかりになる材料はあります。
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