新倉 やはりそこでも、有事法制が政府の思惑通りのものにはなっていないわけですね。

吉田 「20団体」は、「機長や船長のように航空法や船員法などの関係法規に基づく権限が定められている場合、業務従事命令との関係はどうなるのか」「機長・船長権限と命令とどちらが優先されるのか」という問いも発しています。
防衛庁は、「それぞれの法に則っていただく。権限についても法の枠内で従事をおこなっていただく」と回答しました。

船員法には、航海の安全確保について船長の職務と権限が定められています。航空法にも、機長は航行に支障がないことや運航に必要な準備が整っていることを確認したうえで航空機を出発させる、という規定があります。民間の船でも飛行機でも軍事輸送の目的で使用されたら、国際法上では攻撃の対象にされてしまい、危険にさらされるんです。

安全のためにも、戦争に加担しないためにも、船員や航空機乗務員が戦争協力を拒否する権利の根拠はこうした個別法のなかにもあります。武力攻撃事態法や自衛隊法がそれを超越した力を持っていないことは明らかです。

また地方自治法では、自治体の事務として「地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」と定められています。もしも民間港や民間空港が軍事利用されたら、そこが攻撃対象になってしまいます。住民及び滞在者の安全を保持できなくなります。

だから、地方自治法を守らなければならない自治体職員は、民間港や民間空港の軍事利用につながる業務には従事できない、戦争協力はしない、という論理立てを横須賀市職員労組の方から聞きました。
このように、憲法に源を持つ様ざまな個別法に宿る平和力によって、有事法制を空洞化していく可能性はあると思います。( 10へ続く >>>

★新着記事