吉田敏浩×新倉裕史 対談(11)
各国の地方自治体同士の連携で、戦争にむかう国家の暴走を止めることができるか? 小さな市民活動が平和のためにできることは?自治体や町内会との対話で結ばれる21世紀の平和運動。

《自治体による平和外交の動き》
吉田 何度も言うようですが、アメリカが起こす戦争を日本が支援し、しかも参戦できる体制をつくるのが、有事法制の真の目的です。小泉政権はその狙いを隠して、「備えあれば憂いなし」という口当たりのいい言葉を使い、有事法制を正当化しています。

しかし、日本のように都市化され、工業化された社会は、人口も集中していて、原子力発電所や工場など破壊されたら大被害を招く施設もたくさんあります。日本で戦争が起きれば、日本社会は破局に到ります。政府が国民保護法制案で示すような住民避難など非現実的です。

だから、戦争を起こさないように平和外交に徹することこそが、本当の「備え」だと思います。
ところが、小泉政権のやり方は再び戦争の惨禍を引き起こしかねません。憲法の前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と書かれています。

まさに今、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」ために、どうすればいいのかが問われています。

この問題に関して新倉さんは、「安全保障や外交を政府の専権的な管理事項にさせず、つまり政府の手だけにゆだねず、自治体外交や民際外交が安全保障面でも独自の役割を果たすべきだ。その権利もある」という意見をお持ちです。具体的にはどのようなことでしょうか?

新倉 2002年に、埼玉県の土屋義彦知事(当時)が、有事法制に関する小泉首相と全国の知事との意見交換会後、記者の質問に対して、「これからは自治体の草の根外交が平和国家として生き延びる道」と答えました。

本来、日本政府の外交は憲法からみれば非軍事、平和外交しか選択肢がないはずです。いざとなったら戦争を仕掛けて、軍事力に物をいわせる外交は放棄しているんです。有事法制をつくるということは、「軍事力に物をいわせる選択肢もありますよ」と内外に示すことになります。

それを踏まえて土屋さんは、「日本の平和主義を守るためには、自治体の草の根外交が必要だ」と言ったんです。注目すべき発言だと思います。自治体の長である知事からこうした言葉が出るということは、自治体外交や民際外交が決して架空の話ではないということです。

吉田 日本海を取り巻く各国の自治体間の交流なども盛んになっていますね。
新倉 世界的にも自治体外交は、一種の政治機構として確立しつつあり、とりわけ日本にはふさわしい外交手段だと思います。
すでに日本海側の自治体(県や市町村)は「日ソ(露)沿岸市長会議」、「北東アジア地域自治体連合」、「東アジア都市会議」等の環日本海自治体外交の実績があります。韓国や北朝鮮やロシアの自治体と国境を越えた自治体どうしの友好関係を結ぶことは、まちがいなく極東の平和につながります。

自治体外交といってもまったく新しいことを始めるわけではなくて、すでに神奈川県では「民際外交」というかたちで長洲元知事が現実におこなっていました。もっと広げれば、姉妹都市提携も同様です。第一次世界大戦後にイギリスとフランスの自治体間で、国家間は戦争しても、姉妹都市提携をすることで自治体どうしは戦争をしないことを選択しうるところからスタートしました。

「姉妹都市提携」は本質的には自治体の平和外交で、すでに行っていることなんです。鳥取県の境港市は北朝鮮の元山(ウォンサン)市と姉妹都市提携を結んでいるのですが、国家同士は国交が無くても、このように自治体は手を取り合うことができます。これからは、安全保障を国に独占させないために、自治体外交がもっともっと必要になってくるでしょう。

自治体の平和外交は、資金繰りとか厳しい現実はありますが、もはや止めることができない動きになっていると思います。
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