「遺骨捏造」ぱれてうろたえる
拉致事件をめぐり噴出した経済制裁論。その選択は正しいと言えるのだろうか。10年以上にわたり朝鮮半島の取材を続けてきた石丸次郎が北朝鮮との向き合い方を語る。(編集部)
石丸次郎 拉致問題を考える1回へ

(写真右:11月の日朝実務者協議で、北朝鮮側が提出した横田めぐみさんの写真。他の被害者に関する情報がほとんどない中で、横田さんに偏重した情報提出は、北朝鮮当局に対しさらに疑念を募らせる結果になった。)

横田めぐみさんのものと北朝鮮が提示した遺骨が、別人のものであるとのDNA鑑定結果が12月8日に公表された。その後、6日間の沈黙を経て、北朝鮮当局は外務省スポークスマン談話で、鑑定結果に対する公式見解を発表した。談話の文面は、一見、日本の鑑定結果への反発と強硬姿勢で貫かれているように見える。だが、よく読むと、談話は当惑と苦渋に満ちたもので、金正日政権が相当うろたえていることが伝わってくる。引用してみよう。

「...夫が自分の妻でもない別人の遺骨を日本側に手渡したということは想像だにできない。日本側の主張どおり、彼が他人の遺骨を日本側に渡したとすれば、一体そこに何を期待するのかということである」

科学的根拠を突きつけられてオロオロしている様子が目に浮かぶようだ。<遺骨を渡したのは政府ではなく、あくまで夫だ>と、まず政府の責任を回避してみせ、<その夫が他人の骨を渡すなんて、我々も信じられないのだ>と、他人事のように驚いてみせている。そして鑑定結果について「・・・特定の目的のために事前に綿密に企てられた政治的脚本に基づくものであるとの疑惑を抱かざるをえない」と、受け入れがたいものとしているが、なんとも婉曲な言い回しである。

遺骨がニセだと北朝鮮外務当局が知っていたのか、「特殊機関」(工作機関)からはホンマ物と言われていたのかわからないが、言いがかりにしても、なんとも力がない。

そして、<日本の極右勢力、反共団体、ブッシュ>を持ち出して「反朝鮮策動」だと、一応吼えてみせ、<核問題を巡る6者協議への不参加>をちらつかせる。最後には「対朝鮮『制裁』が発動されれば、われわれはそれをわが国に対する宣戦布告と見なし、強力な物理的方法で即時対応するであろう。これによって朝・日関係と地域情勢に生じる破局的な結果に対しては、全面的に日本極右勢力が負うことになろう」

と、経済制裁発動を牽制してみせた。「遺骨捏造」によって日本の世論が一気に強硬に傾いてしまったことを見て、事態が経済制裁発動にエスカレートすることを警戒してのことだと取れる。だが、それは経済制裁による物質的ダメージを恐れているのではなく、日本が経済制裁に踏み込むことで、国交正常化がはるかに遠のいてしまうことを懼れてのことだろう。
(続く)石丸次郎 拉致問題を考える3回へ

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