07年9月長井健司さんがデモ取材中に射殺される事件があって、ようやく日本でも注目を集めるようになった軍事独裁国家ビルマ。だが、かの地の取材は、暴力と監視と統制のために困難を極める。そのビルマを、規制をかいくぐって長期にわたって取材している大場玲次。ビルマの内実を鋭くえぐる大場のフォトルポルタージュを連載していく。

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※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネ  ームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署  名を「宇田有三」に統一します。

連載開始に当たって
大場玲次 (おおば・れいじ)フォトジャーナリスト
権力者の思いのままに、物事は進んでく。
ビルマに来てそのことを強く意識するようになった。
日本では、国民を監視する法案が通るようになってきた。

国の政策に反対する意見が言いにくい風潮がでてきているようにも感じる。
社会には反対意見があろうとも、体制は「静かに」変わっていくのか。
行き着く先は、ビルマのような自由のない、管理・監視国家なであろうか。

戦前の日本軍が作り上げたビルマ国軍は今、国民を苦しめる存在となっている。
自由のない社会とは、こういうところか。
ビルマでは、そのことを実感させてくれる。
だが、観光客としてビルマに入ったとしても、その監視体制を実体を感じることはまずない。
外国人として第3者の立場があるからである。

生活者として現地にとけ込むと、時に恐怖を感じる暮らしを体感できる。
政治的に膠着状態の続くビルマは長年、大きな動きがない。
そのため国際社会からほとんど忘れられている。

だが、そんな国であってもそこに生活する人は、もちろんいる。
その人びとの声はなかなか伝えられない。
2007年1月から1年間、ビルマ軍政の監視を受けつつこの国の中を移動し、人びとの生活の中に入り込んで、この国の実情を見てきた。それを報告したい。
安全上の理由から、地名・人名・日付等を変更せざるを得ないことがあることをお断りしておく。
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