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準戦時態勢宣布などどこ吹く風か。ミサイル発射から約1ヶ月後の8.15光復節、女子学生がディスコ風ダンスに興じている。 (2006年8月 清津市 リ・ジュン撮影)

 

[解説]ミサイル発射の夏、北朝鮮国内は 2 リュウ・ギョンウォン
お祭り騒ぎと緊張感
ミサイル発射と関連して、機関や企業所に組織的に伝えられた上部からの指示には、次のような二つの特徴があった。

1「住民たちの過敏な反応を防ぐことが重要だ」という指示があった。
「将軍様の配慮によって『人民たちを不安がらせないようにせよ』『軍隊だけ動員せよ』『大げさにするな』」という内容の特別指示が下されたのだ(記者ペク・ヒャン報告)。
そのため、ミサイル発射後には、市場の食糧売り場はむしろ活発になった。一方で夏の暑さのために、食中毒の原因になる食べ物を売る店は閉めるように、との措置が取られたという。

このような「将軍様の配慮」のおかげもあり、「男女平等権法令発布記念日」である七月三〇日には、いたるところで女性たちの集まりが催され、祝日の雰囲気とあいまって異常なほどの大きな盛り上がりを見せたそうだ。

また、光復節である八月一五日には、老若男女問わず、都市住民の過半数が野外にあふれ、歌い踊ってささやかな宴を楽しんだ。
さらに、新しく制定された八月二五日の「先軍記念日」も、盛大に祝い遊ぶようにとの組織的指示がすでに出されていた。

この祝日のはちゃめちゃぶりをビデオで取材した記者リ・ジュンは次のように報告する。
「『先軍記念日』は、とにかくと祝えと言われるので、何の祝日かみんな訳もわかっていないのに、ええい、何でもいいから飲んでしまえ、という雰囲気だった」。
祝日が特に制約もなく営まれ、むしろ例年より派手に騒いだということが、今回宣布された「準戦時」の性格を如実に説明しているといえる。つまり、酒を飲んで騒げる程度の準戦時態勢だったというわけだ。

2 組織別の講演(注1)を通して、公式に「これからは中国もロシアも我々を支持しない」と国民は通告された。
また講演では「今後は全てを我々の力で解決せねばならない」と、孤立感を醸成し、緊張感を煽った。
一方、幹部対象の講演では、ミサイル発射が実際に成功し、その目的も達成されたと伝えられたという。

「敵対国の制裁と干渉から自分たちの利益を守るため、我が国から先に攻撃しなければならない。発展した国々は、戦争を嫌がってやれないものだ。であるから、自衛的軍事力で先制攻撃を加えなければならない」という内部の空気も広がっていたそうだ(記者リ・ジュン報告)。
(つづく)
注1 講演 政府の政策や見解の宣伝、思想の統制と教化のために、職場や地域、党組織などの機関で頻繁に行われる。

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