取材中のシン・ドソク（左）
ホソク これは、各人民班に正式に出された指示なんだが、基本的に共同水道は引く場所がない。道が細くて。だから「誰かの家にポンプを設置して、その家にはいくらか負担金を集めて払って、他の動員されなかった家からは水代を取れ」という指示なんだ。
ところが今だに始まらない。なぜか？ そんな金がどこから出てくるのかってことさ。どっかの機関から人が来てボーリング打ってもらってポンプの試運転までしてもらったんだが、15万出せと言われたんだと。
ギョンイル 違うよ、５万だよ。うちもやったんだから。
チュンサム 何言ってるんだ。今は15万なんだよ。
ギョンイル 15万？ 違うよ、５万だろ？
チュンサム まあ、そんなもの規定はないからな。ジャンマダンだって値段はあってないようなものなんだから。
ホソク 水も供給できない国家じゃ、値段も決められないよな。徒労ってやつだよ。
チュンサム まったくわけが分からない。俺たち、「幸せな暮らし」をしてるのか？ 今だに「強行軍」（90年大飢饉の意）をするために、ベルトをきつく締めなきゃならないんだぜ。ベルトの穴をもう一つきつくして。
ホソク この腹だけ出てるの見ろ。
ギョンイル 水腹だな。ところで、ほんとに15万なのか？
ホソク そりゃあ、５メートル掘って水が出ることもあるし、10メートルとか15メートル掘らないと出てこないこともあるだろ？
ギョンイル うちは４、５万でできたのになあ。
ホソク 幹部と一般庶民とでは違うだろ。
ギョンイル 幹部って、俺が何の幹部だよ。
チュンサム れっきとした検閲局（注1）の検閲員じゃないか。
ギョンイル え、まあそのな......ハハハ。
チュンサム だから、こういう奴が幹部になったらあかんのだ。下々の実情を知らないんだから。そんなことだから一般庶民は苦労をするんだ。
一同 ハハハハ。
ギョンイル 俺はそんな悪いことしてないぞ。俺だって人民大衆だ。（注2）
ホソク／チュンサム ワハハハ！
ホソク でも、幹部だから、いろいろ得してきたんだろ？
ギョンイル いや、俺もお前たちと変わらないってば。悪いことすると今はいろいろあるからな。
チュンサム ふーん、するってえと、最近は具だけ食う（良いとこどりする）のはやめて、（人民のように）汁をたくさん食ってるってのか？
（おわり）
（資料提供：2006年12月 記者シン・ドソク（申導石）整理：チェ・ジニ）
注１ 地方の人民委員会（政府）の機関で、行政の仕事が正しく執行されているか、もめごとが起きていないか監督・確認する部署。
注２ 幹部が党よりも人民の側に立ちたがっている。幹部が人民に憎まれることに恐怖を感じていることの現れである。
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