北朝鮮中に「強盛大国建設へ」のスローガンが溢れる(2003年9月両江道恵山市 アン・チョル撮影)

北朝鮮中に「強盛大国建設へ」のスローガンが溢れる(2003年9月両江道恵山市 アン・チョル撮影)

 

全てを隠してきた将軍様
記者リ・ジュン(李準)は核実験直後の二〇〇六年一〇月、咸鏡南道のとある司法機関で働く四〇代の幹部A氏に会い、「一〇・九核実験」について彼の見解を尋ねた。二人は遠い親戚関係で、腹を割って話すことができる、日頃から親しい間柄である。

リ・ジュン:今回の核実験は地下で行ったというが、それは地下に入れて撃ったということかな?
幹部A:これは実は大切な問題なんだ。核実験は、地上ではできない。核実験を地上でやることは危険なんだ。

爆風や放射能が広がると、中国だろうがなんだろうが全部被害を受ける。他の国にまで被害を与えてしまうと、我々はお終いだ。だから地下でやったんだ。
「もしも我々が戦争に負けたらどうするか?」

一九九一年、(金日成)首領様が出したこの質問に、(金正日)将軍様だけが答えることができた。
「地球を粉々に砕いてやります!」
このように答えたんだが、言った本人の本心はどうだか知らないが、それを聞いた人々は誰も言葉のあやだと思っただけで、現実性があるとは信じなかった。
核実験を地上や海上で世界中が見られるように堂々とできる国は、超大国だけだ。
私たちの核実験はそれらとは性格が全く違う。だから今回の爆発も私たちさえ影響を受けなかったぐらい小さいものだったんだ。

リ:そんなちっぽけな核実験を、あえて金を無駄に使ってなぜやるんだ?
幹部A:軍事的には、そう、無駄遣いだと言えるが外交的には違う。
貧乏な我々は犬のえさにどんぐり飯だ(=まともに食べられない)「支援してくれ、助けてくれ」といくら頼んでも、どこの国も助けてくれない。

リ:ロシアや中国は?
幹部A:「永遠の兄弟、親友はいない」というのが我が党の内部の声だ。
中国はアメリカに経済的に従属しており、我々を裏切っているからな。
我が国があまりに力がないから、中国の圧力に耐えられはしないし、だからと言って中国に背を向けるわけにもいかないし、にっちもさっちもいかないのだ。こんな本音は誰にも見せられないのだ。

「我々をのけものにするような国際社会は、適当におどしてやれば事態が変わるかもしれない」というのがまさしく「地球を砕いてやる」という最高司令官の戦術だ。
将軍様は、核実験をしたことがよほど嬉しかったようで、「日本からの解放の次に誇らしいことだ」と満足を述べられた。将軍様が国防委員長になった九三年に「第二の解放を目指せ」と、情熱的に言って以来、初めて「解放」という言葉を聞いたよ。
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