「ガキが生意気に、『気をつけ』ではなく、『じっと立ってろ』だと?」
「おい、このガキどもが! なめやがって!」
兵士たちは口々に文句を言いながらも、武装した私たちに気押されて整列し直した。
今の軍人たちの質は、以前とは全く違うものになってしまった。この性質の良くない兵士たちに行事警護を指揮する上将がこう言った。

「将軍様が食堂を見回ってから養魚場に向かう時、万歳(マンセー)を叫びなさい」
事前に保衛司令部(軍隊内の情報機関)と総政治局(軍隊内の政治指導機関)で区分隊の「一号行事」準備を綿密に行ったというのに、ちゃんとできるかと、えらく緊張している。

将軍様をお迎えする前に、区分隊の半分以上の人員は、保衛司令部要員に変えられていた。
まず、問題のある隊員を部隊から外した。次に、騒ぎをちょくちょく起こすような、目につく「自由主義分子」たちを、保衛員が連れて行ってしまった。
何度かこのような「掃除」を行って部隊人員をきれいに整理した後、行事準備状態を上部に報告するのだ。
*  *  *
長兄が驚いて言った。
「そうなのか? 俺の時とは随分違うなあ。上と下が分裂しているような気がするなあ」
これで兄たちは私の辛さを理解したようだった。行事警護勤務に出る我々としても、いつも胸が痛む行動なのだ。それでも、私は宣誓をした軍人だ。

「将軍様は、ぐるりと視察されましたよ。初めは病室、食堂。養魚場を見回っていたけれど、そこに『平壌オモニ』が現れたんで兵士たちは興奮してしまいました。歌でだけ知っていた『平壌オモニ』に初めて直にお目にかかったんですから」
*  *  *
将軍様と「平壌オモニ」に向かって歓声を上げる兵士たちの声はかすれていた。それでも、その「マンセー」の声は、周辺の山や谷にこだました。兵士たちは、新鮮な衝撃に強く反応したのだった。

行事の最後に準備された一号撮影台に撮影対象者たちが上がる時も緊張感があふれた。

将軍様と一緒に写真を撮るわけだが、将軍様の近くに立つ人々の中に、区分隊の軍人たちはあまりいない。ほとんどが、保衛司令部が連れてきた人員だ。

そんなことは、我が行事警護の人間もよく分かっているが、どうしようもない。区分隊の視察を終えた将軍様はそれを知っているのだろうか……。
ともかく、将軍様は兵士たちにねぎらいの言葉をくださった。
*  *  *
労働新聞を始めとする政治報道班たちは、将軍様の部隊視察のニュースを、上部が指示した日程に合わせて新聞、ラジオ、テレビに発表した。
私が知っている先軍時代の「一号行事」とは、このようなものだった。
資料提供 記者シン・ドソク(申導石)
二〇〇六年一二月
(整理 リュウ・ギョンウォン)

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