核実験強行に先立ち、北朝鮮当局は準戦時態勢を宣布して志願兵を募集した。写真はその壮行のパレード。(2006年8月清津市 リ・ジュン撮影)

核実験強行に先立ち、北朝鮮当局は準戦時態勢を宣布して志願兵を募集した。写真はその壮行のパレード。(2006年8月清津市 リ・ジュン撮影)

 

認めてほしくて撃った「特殊な核」
核実験が報道がされた翌月の一一月、記者シン・ドソク(申導石)は、韓国のKBSラジオ放送を密かによく聞いているという、三〇代半ばの金物商人の友人に会い、一〇・九核実験についての考えを聞いた。

シン・ドソク:核実験のせいで、国連が経済制裁を加えると言っても、何か効果があるだろうか? 我々はいつも制裁の中で生きてきた。
金物商:それは、「新聞の名セリフ」(常套句)だよ。
我々が、核保有国だと宣言するのは、国連常任理事国と同等の地位に上がりたいということと同じだ。言うなれば、世界を動かす国になってやろうという意味だ。

しかし、いったい、そんなことがまかり通るか? わが国が世界をリードしていくとしたら、世界を飢え死にさせてしまうということなのに。
まともな考えを持っていたら、誰も認めるはずがないよ。将軍様は別だけれど。
だから、「朝鮮が核保有国ということを認めてくれ」と、我が国は要求したが、結局、経済制裁という答えが返ってきたってわけだ。

もちろん、制裁の効果は小さいかもしれない。なぜなら、我が国はあまりにも鎖国的だからだ。
おかしいだろう、制裁の効果が少ないのは、無産者だということを証明しているんだから。制裁する対象が、他の国に比べてずっと少ないということだ。
だけど、効果は現れてる。見ろ、日本製の中古自転車の価格が上がってるだろう。カニ商船(注1)もあがったりだし、日本円も下落しちまった。

シン:それで、今回の核実験をどう見てる?
金物商:それは、我が国を認めてくれと言って撃った「特殊な核」だろう。
米国や日本に、我が国を認めてくれというショーということだろうな。

シン:そんな猿芝居で、認めてくれるか?
金物商:そうだよな。しかし、チャンスはあるだろう。
元々、朝鮮人は、大統領(注2)からして人間の命を大事にしないじゃないか。生きることに対する愛着がないんだろう。
いい暮らしをしたことがないから、どうせこんなしんどい暮らしを続けるのなら、「いっそ、戦争でもやってやれ」てなもんだ。
大統領からして「死を覚悟した者に怖いものはない」とかいう風に庶民を教育しているんだから。
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