両政府にとって公開したくない弱みとはなんだったのか。そして誰がどこで仲立ちをして、この「戦争」を回避したのか、理性に欠ける中国国民党議員がみんないっせいに黙ってしまう背景にはなにがあるのか。台北に住んでいる日本人も唖然とするばかりだ。

そして報道の最後を締めくくったのは、沈没船の船長が暮らしていけないと泣き崩れ、政治家がその肩を抱いて、私に任せなさいと励ます記者会見。これは台湾人が大好きなシチュエーション。しかも悪役はニッポン。

この馬鹿げた騒動と同時進行で、中国と台湾の通航交渉が妥結して、いよいよ七月四日から台湾人悲願の両岸直航定期便が飛ぶことになった。当面毎週三十六便(往復)で今秋には倍増する計画。
七月十八日からは大陸からの観光客(「陸客」と称する )も解禁というわけで、台湾は「陸客」ブームに沸騰している。

ざっと一年で五十万人。しかも日程は平均10日間。けちな日本人観光客など目じゃないとばかりに、台湾観光産業は日本から中国へとシフトを大転換する。全国の観光施設、バスの運転手にも特別な指導がおこなわれたという。これからは「礼儀正しく!」である。
中国との友好ムード高まりの一方で、日本との間でみせた亀裂。今週は、台湾外交の大方向転換を象徴する一週間として記録されることだろう。

・馬英九政権は相変わらず、閣僚のグリーンカード問題で揺れる。しかし台湾のちょっとしたカネモチはみんな「二重国籍」。民進党の追究も迫力がない。
・「中国時報」が職員の半分六百人の首を切ると発表。事実上、台湾を代表する日刊全国紙としての地位を放棄するものといえる。住民の新聞離れがすさまじい。

・台北の中正紀念堂の蒋介石の銅像が原状を回復した。
・中国の交渉代表が来台の際、馬英九総統には、「馬先生」と呼ぶことになったらしい。彼らにとっては、馬英九は省知事に過ぎない。「先生」も妥協の産物か。

・腸管ウイルスによる感染症が流行。二百人以上が発症し、八人の子供が死亡。政府は、就学前の子供の外出に注意を促す。この時期、日本人観光客も子連れの夜市散歩などは避けたほうが無難。
・今日6/20、交流協会(日本大使館)の副代表が改めて遊漁船の船長宅を訪問し、海上保安庁第11管区海上保安本部からの「おわび」の文書(日本語)を渡し、賠償を約束。台湾メディアによると、福田首相と馬総統が直接収拾策を決定したという。

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