APN_ogura_080704_1会議場近くで爆弾が爆発
午後6時前、どうやら、3政党のあいだで合意が成立したらしいという噂がプレス席で広まった。議会場内では携帯電話が使えないため、ネパール人の記者たちはしょっちゅう外に出て電話をしていた。有力日刊紙の記者たちは、さすがに情報が早い。マオイスト側が譲歩して、大統領を国家元首とすることに同意したということだった。

午後6時10分、マオイストのプラチャンダ党首が議会場に現れた。これで、ようやく議会が始まるかと思ったら、とんでもなかった。各政党の党首らは議会場内にある部屋に集まって、議事進行のための会議を始めた。このあと、さらに3時間、待つことになるのだが、この間、いろいろなことが立て続けに起こって、飽きることはなかった。

まず、午後8時ごろ、議会場内にも聞こえるほどの爆音が西側から聞こえた。すぐに外に出ると、門の近くで爆弾が爆発し、負傷者が1人出たという。Kantipur TVの知り合いの記者が、爆弾を置いた犯人とおぼしき人をマオイストのYCLが捕まえて警察に引き渡したらしいと教えてくれた。この後、別の記者が、議会場付近では二つの爆弾が爆発したこと、ラトナ公園近くでも爆発があったと話していた。しかし、これらの事件は議会にはまったく影響を与えることがなかった。

ようやく議会開始のベルが鳴ったのは午後9時15分だった。白いジャケットを着たギリジャ・プラサド・コイララ首相がボディーガードに支えられるようにして、議会場に入ってきた。84歳になるコイララ首相は全議員のなかで最長老である。この日は体調が悪く、議会場に入る前に酸素吸入をしてきたとある記者が言っていた。

制憲議会の議長はまだ選出されておらず、これまでの慣習にしたがって、最長老の議員が議長を務めた。最長老のコイララ首相が議長を務めることができないため、コイララ首相に次ぐ長老のネパール会議派のクル・バハドゥール・グルンが議長席に着く。この制憲議会に至るまでの民主化運動の犠牲者に2分間の黙祷を捧げたあと、コイララ首相が身体を支えられながら壇上に上って演説を始めた。

共和制に対しては、ずっと反対の姿勢をとってきたコイララ首相は、どういう思いで演説をしているのだろうと思う。今回の選挙でネパール会議派は大敗を喫しており、本来であれば、党首としての責任をとって辞任をすべき立場にあるのだが、コイララ首相は次期大統領の席をもねらっていると報道されている。「制憲議会選挙後は、政界から身を引く」と繰り返し発言していながら、やはり、いったんつかんだ政治権力はなかなか手放しがたいのだろうか。
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