揺れるカシミール 廣瀬和司の緊急現場報告/2008/08/27

080901_APN_hirose_kashimir0.gif6時半に起きると、騒動は始まっていた。人びとが、早朝の警備が手薄な時間帯を狙って市場へ走ろうというのだ。市場の中は、先日親子が撃たれた地区なので抗議を恐れて警察や兵士も入らない。せいぜいパトロールカーでたまに回る程度だ。

今いるのは、地元の警察官一人のみ。宿の主人が行くと「早く行け」と見逃してもらえた。その成功を見て、少しずつ人びとが出てくる。だが、それからすぐCRPF(インド人)の兵士も増えてきて、笛を鳴らして阻止する。

宿の主人も帰路に「誰の許可を得たんだ」と兵士に怒られたらしいが、「たったいま、ちょっと行ってきただけ」と誤魔化したそうだ。ただ、物価は上がっており、野菜はいつもの倍の値だそうである。また、九時に外出禁止令が緩和される、と警察官が言っていたらしいが、それがなるだろうか。

午後になり、クプワラとバドガンの2地区で2時間の緩和令が出された。スリナガルではまだだ。やはり、食糧の蓄えが尽きてきたらしく、野菜を買おうと、人びとはなんとか表通りに出ようとする。女性が主なので、さすがにCRPFは暴力を振るわないが、絶対に許可はしない。押しと留められては戻り、しばらくするとまた出てきて兵士たちと交渉する、の繰り返しである。

2時半になり、私が滞在する地区を含めて6カ所で、3時から外出許可がでる。時間が近づくと兵士たちが「早く行って用事を済ましてこい」とせかす。

歩いて20分の付近で一番大きなバザールへ行くが、突然の決定のせいか店がほとんど開いていないので、みな手持ち無沙汰にしている。ただ、薬局だけ早々には開いており、人だかりがしている。病気になっても病院にいくことができないので、なんとか薬で対処しようとしているのだ。
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