揺れるカシミール 廣瀬和司の緊急現場報告~犠牲祭を迎えて (2008/09/30)

 

【スリナガル発(インド側)】
あと1日でラマダンが明ける。ラマダンが明けるイード(犠牲祭)は、お正月のようなものだ。だから、今はいわば大晦日。みなイードに備えて買い物に忙しい。

ベーカリーは店先に大量のケーキやビスケット、クッキーを並べ、店員も増やしているがとても追いつかない。肉の値上がりも大きく、友人曰く、普段の1.5倍だそうである。

また、友人たちと会うと合言葉のように訊かれるのが「準備はできているか?」という言葉だ。準備とはもちろん10月6日に行われる予定の「ラル・チョークに集まれ」の集会についてだ。

【イード前日、まだ午前10時だというのに、この賑わいだ】(スリナガル/撮影:広瀬和司)

カシミールの市民及び、分離・独立派の団体はカシミールの夏の州都スリナガルの中心部ラル・チョークで大集会を行おうとしているのだ。

本来は8月24日に行われる筈だったが、前日から厳しい外出禁止令を敷かれ、中止に追い込まれた。
今度も集会を開くことは許されず、厳しい外出禁止令が敷かれるのは確実だ。

それでも「今回は人びとは外に出て、ラル・チョークに向かうだろう。前回は外出禁止令を予期していなかったし、今回はみんな長い間待たされている」と言う。

この間、インド政府は、印パ両カシミールを結ぶバスを月1便に増発すること、10月21日から両カシミール間で直接貿易を始めることを発表し、事態を終止しようとしているが、遅すぎた感は否めない。

【ラル・チョークは大勢の人で賑っているが、10月6日にここで大集会は開けるのか。可能性はかなり低い】(スリナガル/撮影:広瀬和司)

「これが2ヶ月前なら大喜びしたけど、この程度なら」と言う。
いまNGOの事務所でこの原稿を書いているが、地方から来たスタッフたちは故郷でイードを迎えるために「ちょっとお先にイードムバラク(イードおめでとう)!」と言って帰っていった。

イードが明ければ、大きな騒動が待っている。それまで少しでも心休まる日が続きますように。
イード、ムバラク!

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