安州公設市場の周囲には、露天の食べ物屋が広がっている。軍人たちが食事する横で、食べ物を乞うているのだろうか、コチェビ(浮浪児)らしき少年が立っている。
(2008年9月6日平安南道安州郡にて 北朝鮮内部の記者・シン・ドソク撮影)

 

金正日のいない建国60周年
9月初旬から中朝国境地帯に取材に行っていた。
北朝鮮に住むリムジンガンの記者たちと接触するのが、この度の国境行の一番の目的であったが、近々に北朝鮮から出てきたばかりの人々にインタビューして、内部の最近の動向を取材することも重要な目的であった。

しかし、北京五輪をきっかけに中国側の国境警備が厳重になり、北朝鮮から合法・非合法に出てくる人は激減、現地の協力者を総動員しても、北朝鮮から脱北、越境してきたばかりの人に会えたのは、5人がせいぜいであった。

取材の最中の9月9日に、北朝鮮は建国60周年を迎えたのだが、その記念行事に金正日総書記が姿を現さないという「一大事」が発生した。
世界中が、親から継承した権力の座に長年君臨してきた独裁統治者の安否と、国内の動向について注目することになった。

北朝鮮では昨年から、08年の建国60周年に向け全国で行事が重ねられ、官営メディアも「今年を歴史的転換の年とする」と宣伝してきた。
「歴史的転換」というスローガンからは、米国との間で核問題に決着をつけ、テロ支援国指定解除を勝ち取って関係改善を果たし、経済発展のテコにしようという目論見が窺える。

建国記念日は、今年最大のイベントとして、軍事バレードも準備されてきたのだった。
しかし、金正日の姿は式典に見えなかった。
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