咸鏡北道の少年団の幹部たちを対象にした夏期キャンプで歌を披露している様子。赤いマフラーが少年団の証だ。(2006年7月 リ・ジュン撮影)

 

政治は腐敗し、経済は破綻、社会は無秩序に陥って久しい北朝鮮だが、もう一つ深刻な問題がある。それは国家と民族百年の大計たるべき教育である。
表向きは無料教育の看板を掲げているが、その実、朝鮮の教育は「資本主義の商業的教育」よりはるかに深刻な状態にある。

編集部は、幼い子供たちに対する国家による収奪、教員と学校による度を超した金品の要求、商業化した運動会、学校教育の空洞化に伴う私教育ブーム、子供たちの学力低下、旧態依然とした教授方法など、様々な問題を巡って悩む保護者と教員の声を、シリーズで伝えていくことにした。

本シリーズは、学校に通う子を持つ母親である、リムジンガン記者のペク・ヒャンが、北朝鮮の教育の実態を記録、報告するために重ねてきた取材に基づくものである。彼女が送ってくる録音テープには、北朝鮮の学校の実情が実によく表れている。
整理者は、同じ子を持つ母としてその内容に深く共鳴しつつ、読者のよりよき理解のため、インタビュー記事を以下のような物語風に整理した。文責は整理者にある。

今回掲載する内容は二〇〇六年一〇月、咸鏡北道のある女性の身に起こった出来事に基づくものである。
(整理 チェ・ジニ)

早朝、ヒョクの母さんは起きてすぐに米の仕入れに出かけた。玄関を出たところで、冷たい風に息が詰まりそうになった彼女は、一度家の中に戻ってコートを着こみ、マフラーをしっかり巻いた。
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