大村一朗のテヘランの風 市民の台所 青果市場の実情(08/11/10)


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【近所の青果市場の果物ブース 日によって品質はまちまちだ 】(撮影:大村一朗)

インフレ率が20パーセントを超えるイランでは、買い物の際、常に割高感を感じる。先ごろ中央銀行から発表された統計では、食糧品に限ってはインフレ率が34パーセントに達しているという。

我が家でも、食費節約のため、野菜や果物の買い物は、近所の八百屋ではなく、15分ほど歩いたところにある青果市場まで足を伸ばすようにしている。

テヘラン市街30地区には、それぞれ市が運営する青果市場がある。野菜、果物、ハーブ類をはじめ、乳製品、米、肉、魚を売るブース、さらに、チャイと蜂蜜屋、干し果物とナッツ屋、花屋、文具屋、日用雑貨、お菓子屋など、大小様々な店舗が並び、日常生活に必要な品物が一通り手に入る。

どの商品もおしなべて市価より安く、特に野菜、果物、ハーブ類は、市価の半額以下だ。大家族がまだまだ多いこの国では、野菜は数キロ単位での買い物となり、青果市場の価格は庶民の強い見方である。

とはいえ、青果市場での買い物は非常に疲れる。
メインである野菜と果物のブースには、いつもレジの前に長い行列が出来ている。外の八百屋と違い、ここでは自分で品定めすることはできず、傷んだものまでまとめて袋に放り込まれてしまう。おまけに1キロほしいと頼んでも、たいていは2キロ近くを入れられ、こんなに要らない、傷んでいるのを入れるな、と毎回やり合わなければならない。

店員とやりあうだけでなく、列に割り込んでくるおばさんたちも油断のならない存在だ。イランの行列には独特のルールがあり、いったん列に並び、自分の後ろの人間に「戻ってくるから」とか「心臓が悪いからあっちで座ってる」などと断り、列を抜けることができる(これをやる90%は女性)。

このため、列に並んでいるのが5人であっても、実際には10人以上の待ち人数があり、順番が近づくと次々に列に復帰するおばさんたちのせいで、自分の番は一向にめぐってこない。こうしたルールを悪用し、いきなり何食わぬ顔で横入りしてくるおばさんも多く、イランの食卓に欠かせないハーブ売り場のレジ前は常に殺気立っている。
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