内部記者が撮った! 北朝鮮最新事情 2
写真 チャン・ジョンギル  解説 石丸次郎

◆商売、商売! 上(撮影日:2008年8月中旬~9月初旬 場所:平壌市郊外江東郡某所)
北朝鮮では、ほとんどの職場で給料も食糧配給もまともに出なくなって久しい。
生きていくために、人々は国に頼らずなんらかの経済活動をしなければならなくなり、非合法の商売行為を始めた。90年代中盤のことである。

自然発生的に出現した市場は、瞬く間に全国に拡大・増殖し、北朝鮮社会を大きく変化させつつある。現在、ほとんどの人は国の統制経済システムのもとではなく、市場の中で糧を得て生きている。
それでも、組織生活を統制の基本とする北朝鮮では、職場への出勤が強要されている。とりわけ男性には厳しく、無断欠勤が続くと短期の収容施設である労働鍛練隊に送られ強制労働を強いられる。

そのため、女性が商売行為が許される「家庭の主婦」を装って市場に出ることになる。写真で、商売しているのがほとんど女性なのは、そのような理由による。

北朝鮮内部記者のチャン・ジョンギル(張正吉:仮名)が撮影したのは、2008年8月中旬から9月初旬にかけての平壌市郊外江東郡の市場の様子である。
江東郡は田園地帯の中に国営の軍需工場が集中している地域であるため、市場が様々な制約を受けるというが、写真に見えるのは民衆の凄まじい「商魂」だ。生き延びるためには商売しかないのだから仕方がない。

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一見中国の地方都市と見紛うような光景だが、町の公設市場に連なる道に、近隣の住人が品物を持ち寄って売っている。

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空き地に人が集まって来ると、自然と市が開かれる。近隣の農民が野菜やウサギなどの家畜(右上の籠の中)を売っている。

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