ところが、この活気に満ちた師走の日々に、耳を疑うようなニュースを聞いた。2月14日、テヘランの国会前で、60歳の男性が生活苦を理由に焼身自殺を図った。自分の住む町から選出された議員に陳情に訪れたが、国会への入場を阻まれ、アルコールを頭から被って火をつけたという。この男性は一週間後に収容先の病院で亡くなった。

この事件は、この男性の息子たちが、男性がイラン・イラク戦争の傷痍軍人であると語ったことから波紋を呼んだ。というのも、イラン・イラク戦争の傷痍軍人や殉教者の遺族は、国から手厚い恩給と保護を受けているはずであり、体制の厚い支持層を形成している彼らが生活苦で自殺したとあっては、体制維持の根幹に関わるからだ。

結局、国会による調査の結果、イラン殉教者・献身者協会のデータベースにこの男性の名前がなかったことから、この男性は傷痍軍人ではなく、ただのジャンキーだったという結論に達し、政府としては一件落着した。ラーリージャーニー国会議長は、彼が本当に傷痍軍人なら、こんなことになるはずがないと語った。
だが、傷痍軍人でないならそれでいいという事態ではなかった。

複数の独立系のメディアによれば、この事件以外にも、1月から2月にかけての一ヶ月間だけで4件もの焼身自殺未遂がテヘランで起っている。1月27日にはバム地震の被災者が大統領官邸前で、2月18日にはイラン・イラク戦争の化学兵器の被害者が殉教者・献身者協会の前で、2月22日には地方の青年がテヘラン大学構内で、それぞれ焼身自殺を図り、未遂に終わっている。

イスラムでは、自殺は、神から与えられた肉体を自ら害する許されない行為だ。復活の日の望みすら自ら絶ち切る覚悟で生活苦を訴える人々の存在は、命の再生の祝祭ノウルーズの前だからこそ、なおさら悲劇である。

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