シム:ああ、一五九病院も四軍団傘下ですか? 黄海南道の殷栗にある病院ですね。
一度行ってみたことがありますが、話にならないくらいひどかったんですよ。動けるようになった兵士たちは皆、ドングリ採りに行かせるんですよ
(デンプンを取って酒や食品の材料にする)。
老人:働かせるんだな。

シム:ええ。働かせるんですよ。入院した兵士の中には逃げ出したのが多いそうです。
老人:話にならないよ、全く。

シム:将校たちが金を出して弱った兵士に食べさせるぐらいで解決できるはずがない。国家が金を出してもなかなか大変なのに。
老人:そう、頭が痛いことだよ。

シム:息子さんが○○長なら病院では偉いさんだ。
老人:(微笑)院長に体の具合が悪いと言って、毎月一回位は必ず家に戻って来てたのに、最近は四ヶ月間帰って来ない。どうなったか心配だ。

シム:五一号病院にも親たちが面会に大勢来るでしょう?だったら、息子を見たらそのまま帰れないはずです。なんとか栄養補充をさせようとして病院に居残るんじゃないでしょうか。
老人:親たちはたくさん来るよ。でも栄養補充しても無駄なんだよ。

シム:少し良くなったとしても、部隊に戻ればまた栄養失調になっちゃいますからね。
老人:除隊させて家に連れて帰ろうとすると何万ウォンもかかるんだよ。

シム:なるほど、両親が賄賂を渡して自分の子供を連れて帰るケースがあるんですね。
老人:そうだよ、お金がかかるってことだね。軍隊には送らないほうがマシだよ。

シム:部隊に金を払って家に連れて帰るなんておかしなことだ。軍隊生活もお金があるやつらは楽をするし、庶民は本当にしんどいですよね。
老人:そうだね、あまりにもめちゃくちゃになってしまった。国家権力は以前より強くなったけれど、現実の(行政)活動はゼロだよ、ゼロ。
そのくせ役人どもは、あっちでもこっちでも、何から何まで統制しながら着服してる。自分の権限を利用して私腹を肥やす。だから人民の生活はますますひどくなるというわけだ。

軍隊は軍用米が足りなくてジャガイモを食ってるというのに、保安員(警官)の家には米袋が一杯積み上げられてるよ。
シム:平壌で軍事服務したという若者が、除隊して家に戻って来て話してくれたんですけど、二ヶ月間ジャガイモだけ茹でて煮て食べた、こんなにひどいのは初めてだと。今年(二〇〇八年)はしんどかったようです。食糧難はこの後何年も続くんじゃないですか。
(つづく)

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