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【イラク軍将軍(中央)と両脇にいるのが米軍士官。米軍と同じ迷彩服を着ている左端の小柄な男性が米軍所属のイラク人通訳(ティクリート/3月18日)】(撮影:玉本英子)

玉本英子 現場日誌
米軍通訳たち
2009年3月25日

バグダッドからアルビルへ戻り、「米軍通訳」の取材をはじめた。米国政府関係の仕事を1年以上した場合、グリーンカードの取得などが可能になるため、かなりの数の通訳がアメリカなどへ移住した。
しかし自分の意思や家庭の事情などでイラクに留まっている若者たちも少なくない。
イラクに今も暮らす通訳、元通訳のほぼ全員が、その仕事を隠しながら生きている。

彼らは「占領軍に加担した裏切り者」として武装勢力の攻撃対象になっており、米兵よりも命を狙われる。これまで何百人もの通訳が殺害されたという。
やっと探しあててもメディアに出るのを怖がる者は多く、何人もに断られた。今日はやっと一人がキルクークから会いに来てくれた。

レストランへ入り、食事をしながら話をする。結構フランクに語ってくれるが、ビデオカメラを向けると、怖くなるのだろう、急に答えがあいまいになる。やはり無理はできない。
ティクリートの米軍施設内へ行った時、米兵たちは撤退を大歓迎していた。一方、通訳の一人と立ち話をしたとき「米軍撤退で俺は見捨てられる」と、こっそり話した。

高いリスクに比べ、米軍通訳の給料は決して高くない。月給は日本円に換算すると約12万円で、死んだ場合、約100万円が支払われるだけだ。米兵との違いに愕然とする。
時間はかかると思うが、なるべく多くの通訳、元通訳たちに会って、心のうちに近づけたらと思っている。
(つづく)

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