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【多くの派遣労働者が乗り降りするJR京葉線二俣新町駅】

【多くの派遣労働者が乗り降りするJR京葉線二俣新町駅】

第6章
派遣労働者たちの声と姿を通して

派遣労働者の集まる駅
東京駅からJR京葉線に乗り、江東区の埋め立て地にある新木場駅や、東京ディズニーランドのある千葉県浦安市の舞浜駅などを過ぎて、およそ30分で市川市の二俣新町駅に着く。

駅周辺から南の広い埋め立て地にかけて、大手の運送会社や流通企業の配送センター、大企業系列の倉庫が立ち並んでいる。そこでは、荷物の仕分けや積み降ろし、商品の梱包や検品といった仕事に、多くの非正規雇用労働者が従事している。直接雇用のパートやアルバイト、間接雇用の派遣など、その雇用形態は様々である。
日雇い人材派遣大手グッドウィルからの派遣労働者が、派遣先の西武運輸のトラックの荷台に乗せられ、違法な二重派遣先の物流会社の倉庫に運ばれたことにふれたが、それはこの二俣新町駅からであった。

昼間は乗降客も少なく、駅前にコンビニが1軒あるだけの小さな駅だ。しかし早朝には、パート、アルバイト、派遣の仕事をする若者たちがたくさん集まってくる。私は、低賃金・不安定雇用の派遣労働者に話を聞かせてもらおうと、2008年2月1日金曜日、午前6時56分着の電車で二俣新町を訪れた。

上下線の電車が着くたびに、ジーンズにジャンパーやダウンジャケット姿、スニーカーを履いた若い男性や女性が次々に改札口を出てくる。ほとんどが男性である。コンビニに立ち寄ってパンやおにぎりや飲み物を買っては、吐く息も白く、足早に職場に向かう。会社の送迎マイクロバスに乗り込む人たちもいる。携帯電話を手にして数人で待ち合わせてから行く姿も見られる。

コンビニの前で煙草を吸ったり、缶コーヒーを飲んだり、広場のベンチに座ったりする人に話しかけてみた。「派遣の仕事をされている方ですか?」と、20数人の男性に声をかけたが、「いえ、違います」と答える人がほとんどだった。

アルバイトや有期の契約社員だというケースもあったが、実際は派遣労働者であっても否定した人もいたかもしれない。取材に応じてくれたのは3人だった。最初は39歳の男性で、午前8時からの仕事に向かう前に一服していた。

「仕事は午後5時まで。インターネットで注文を受けるDVDレンタル会社の倉庫でピッキングをしている。ピッキングというのは、伝票に応じて配送するDVDを棚から選び出す作業で、昼休みと休憩を除いて実働8時間」
「自分が登録した人材派遣会社から支払われる日当は、交通費込みで7500円。交通費は片道1000円を超えると、超えた分が別に支給される。日当は日払いで、派遣会社の営業所に取りにいく」
「いまの倉庫は去年の12月初めからで、週5日働いている。いまは夜勤はしていない。月収は15万円くらいで、独り暮らしだから、無駄な生活をしなければ暮らせる」
無駄な言葉は口にしたくないといった様子で、質問にも短く答えるだけだ。
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