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【多くの派遣労働者が乗り降りするJR京葉線二俣新町駅前のコンビニ】

【多くの派遣労働者が乗り降りするJR京葉線二俣新町駅前のコンビニ】

第6章
派遣労働者たちの声と姿を通して

派遣とコストダウン
次に話してくれた33歳の男性は、同じ派遣会社からの労働者と待ち合わせをしていた。外向的な性格なのか、よどみなく語る。
「玩具やゲームソフトやDVDの倉庫で、出荷する商品のピッキングをしています。

そこは3ヵ月目です。勤務時間は午前9時から午後6時まで。時給は900円です。2、3時間の残業をする日もあります。通勤時間は1時間もかかりませんが、遅刻は減給という派遣会社によるペナルティーがあり、信用もなくすので、早めに来るようにしています。ピッキングは個人の能力にもよりますが、1日に1人あたり2000件数から3000件数を選び出します。慣れるまで大変です」

倉庫では100人~150人が働いており、運送会社の正社員が20人ほどいるほかは全て派遣労働者だという。正社員は全体を管理し、実際に体を動かして作業するのは派遣労働者である。ピッキングの担当は40~50人で、仕事慣れしている派遣労働者が新しく来た人にやり方を教えるのだという。
「正社員から、『派遣どうしで仕事を教えるように』と言われています。ただ、派遣の場合はしょっちゅう顔ぶれが変わるので、そのつど教えるのが大変です」

本来は正社員がすべき業務内容の指導まで派遣労働者に任せているのである。そして業務を担っているのも派遣労働者だ。職場は派遣労働者抜きでは成り立たなくなっている。しかし、正社員なみの仕事をしても低賃金・不安定雇用であることに変わりはない。
企業がいかに正社員を派遣など非正規雇用労働者に置き換えて、人件費を削減し、コストダウンをしているかがわかる。そのコストダウンから利益が生まれてくる仕組みだ。非正規雇用労働者の存在を前提にして、企業経営が組み立てられている。

仕事が忙しい曜日に合わせて派遣労働者の人数が増減することといい、いずれも財界が求め続けてきた「労働移動の円滑化による人的資源の最適配分」とは、このように企業に有利に具現化するものだということがわかる。
「派遣は不安定で低賃金、使い捨ての面は確かにありますね。派遣先から無理な要求をされることもあります。例えば、用事があって残業はしないと告げていても、無理やり残業していけと言われたり。俺は断りますが、気弱な人、人見知りするタイプだとなかなか断れません」

「また、以前、ビルの建築工事に派遣されたことがありました。派遣対象外の禁止業務で、危険な現場です。ヘルメットを渡され、高い所の足場に上って仕事をするようにと言われて戸惑いましたが、仕方ありません、働きました。グッドウィルの違法派遣が表沙汰になるまでは、よくあったことなんです」
それでも彼は、派遣労働にはメリットもあると言った。

「派遣の仕事は3 年くらいしていますが、その前は11年間、ある工場で正社員として働いていました。しかし、上司とけんかをしてしまい、居づらくなってやめたんです。派遣の方が縛りがなくて気楽でいいです。上司に気をつかわなくてもいいし、嫌になったらやめて、ほかを探せばいい。それも派遣会社が探してくれます。携帯で派遣会社に電話して調べて、そのなかから選ぶんです。いまは残業代を入れて月に18万から20万円で、正社員の頃より少ないですが、なんとかやっています」
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