ysd_img443.jpg『実務資料』の目次。

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米軍人、軍属、それらの家族(日本国籍のみは除き)が犯罪を犯した場合、公務中でも公務外でも、すべて裁判権は米軍側が握り、日本側は何もできない、という規定である。一種の治外法権的な規定であった。

そのため、日本国内では反発の声があり、日本政府も米国政府と交渉し、「北大西洋条約協定が合衆国について効力を生ずるまでの間」という条件が付けられたのだった。

北大西洋条約協定とは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国と米国が結んだ地位協定で、通称、NATO地位協定と呼ばれる。その協定では、駐留米軍の受け入れ国の法令によって罰することができる犯罪については、受け入れ国が米軍人・軍属・家族に対し刑事裁判権を有するとしたうえで、米軍人・軍属の公務外の犯罪に対する第一次裁判権は受け入れ国にあると定めている。日本側は日米行政協定においてもNATO地位協定並みの規定になるよう望んだのである。

NATO地位協定は1953年8月23日、米国について発効した。それに合わせて日米間で日米行政協定第17条の改定交渉がおこなわれ、同年9月29日、「行政協定第17条を改定する議定書」が日米間で結ばれた。そして、行政協定第17条は次のように改められた。

「合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。
日本国の当局は、合衆国軍隊の構成員又は軍属及びそれらの家族に対し、日本国の領域内で犯す罪で日本国の法令によって罰することができるものについて、裁判権を有する」

日米地位協定第17条も、この日米行政協定第17条をそのまま受け継いでいる。
つづく(文中敬称略)
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