『外国軍隊に対する刑事裁判権の解説及び資料』の表紙。『外国軍隊に対する刑事裁判権の解説及び資料』の表紙。

「検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員又は軍属であって、且つ、その者の犯した罪が合衆国の当局が裁判権を行使する第1次の権利を有する罪であることを明らかに認めたときは、その第1次の権利を尊重する趣旨から刑事訴訟法の規定にかかわらず、直ちにこれを合衆国軍隊に引き渡すべきものとしたのである」(前掲書 p.32 )
「その者の犯した罪が行政協定第17条第3項(a) に掲げる罪のいずれかに該当するということが未だ明らかに認められない間は、直ちに引き渡すべきではなく、刑事訴訟法の手続によって処理されることとなる」(前掲書 p.32~33)

「未だ明らかに認められない間は、直ちに引き渡すべきではなく」とあるように、安保刑事特別法第11条をどう読んでみても、この解釈しかあり得ない。「合意事項」第9項(a) のように、公務執行中だったのかどうかはっきりしない場合、被疑者の身柄を米軍側に引き渡す、という解釈は生み出しようがない。

このように、安保刑事特別法第11条の規定とは相反する内容が、「合意事項」第9項(a) には記されている。安保刑事特別法は全文が六法全書にも載っている国内法である。一方、「合意事項」は全文が公表されない日米間の合意を記した秘密文書である。

国会に対しても、国民・市民に対しても公表されない秘密文書に、国内法令の規定と相反する内容が記されている場合、それは日米の秘密協定・密約の一種と言えるのではないだろうか。
つづく(文中敬称略)
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