生きる方法は脱出のみ [その6]
(文) リ・ドンハク [キルスの伯父・ファヨンの父]

ある家庭の死 糖尿病をわずらった家長(父親)がご飯を食べ過ぎると、妻と息子が首をしめて殺してしまいました。後に、この人たちは捕まって死刑になったといいます。 ―キルス

ある家庭の死
糖尿病をわずらった家長(父親)がご飯を食べ過ぎると、妻と息子が首をしめて殺してしまいました。後に、この人たちは捕まって死刑になったといいます。 ―キルス

 

貧しい暮らしをしながらも、子どもたちは、父である私のことをとても心配してくれた。
「うちではお父さんが一番苦労しています。でもお父さんが一番体が弱いので心配です」
そう言って、私の健康を気づかってくれるのであった。

その頃、妻はジャンマダンに出かけて、さまざまな中古品を売っていたが、昼飯時にも家に帰る時間がないため、ジャンマダンで少しずつ何か買っては食べていた。それで子どもたちは、特に私の食事について、とても気づかったのだ。

長男は、私が好むソバを屋台の食堂で買ってきてくれ、娘は豆腐鍋を買ってきてくれた。
末っ子もやはり、餅やスンデ(腸詰)などを持ち帰ってくることがあった。子どもたちはこうやって別々に食べ物を買ってくるだけでなく、ふたり、3人でいっしょに買いに行くこともあった。

時には外で食事をしていて、父のことを想い少しずつ残して家に持ち帰り、私の口に入れてくれたりした。
今でもその時のことを思い出すと、目頭が熱くなる。
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