列車で送られ救護所に
(文) チャン・キルス

家のないコチェビ 「ああ、かわいそう」 指導員同務が駅の待合室で物乞いをするコチェビを取り締まっています。 ―ハンギル(キルスの兄)

家のないコチェビ
「ああ、かわいそう」
指導員同務が駅の待合室で物乞いをするコチェビを取り締まっています。 ―ハンギル(キルスの兄)

 

車内は人があまりにも多くて、立っているだけでも辛かった。色とりどりのリュックを背負った人でいっぱいだった。ぼくたちはその人たちの間で何とか立っていた。

車内にいる人たちは、ぼくたちが大犯罪人でもあるかのように、互いに顔を見合わせてひそひそ話をしていた。その日は暑い日で、多すぎる人の熱気のせいで、じっと立っているだけでも、汗が滝のように流れ落ちた。

なんと人が多いことだろう! 頭の上にまで人が座っている。足を動かす空間もなかった。便所もなく、ガラスのない窓から用を足す人たち、大便は列車と列車の連結機のすき間に座ってする。男も女も。

のろのろと力のない汽車が何時間走ったことだろう。
ぼくたちは汽車から降りた。
着いたのは「市1.3取り締まり小組」という所だった。

ぼくたちはそこの廊下を通り過ぎ一番大きな事務所に入り、壁に向かって立たされた。護送員たちが報告をした。
「こいつらは二人とも越境者で、一人は審問中に逃げ出したのをつかまえました」
その言葉を聞いた一人が、
「わが金正日将軍様におかれては、安らかにお休みになることもできず、現地指導にずっと行かれているのに、お前たちは国を裏切り、逆賊になるのか? お前たち、死んでしまえ」と言いながら、拳骨を食らわせ足で蹴とばし、ぼくの頭を壁に叩きつけた。
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