山中の道程にて(下)

※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネ  ームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署  名を「宇田有三」に統一します。

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【ビルマ国軍の兵站基地へ物資を運ぶキャラバン隊。車やトラックの上がることのできない地域では騾馬は大切な運搬手段となる】
やっと休憩となる。1日に歩く距離はあらかじめ決まっていない。乾季だというのに冷たい雨が降り続き、険しい渓谷を何度も上り下りする日には、10kmほどしか歩くことができない。

足元が確かで、平らな山道が続くときは20kmくらいは進む。私としては、もっと歩くことができるのだが、荷物を持っているポーターたちのペースを考えなければならないのだ。

1人でも身体の調子を崩すと、9人のチーム全体が進めなくなるからだ。
ポーターの何人かが、流れの厳しい川の両側に掛けた丸木橋の上を歩いていたとき、それぞれの抱えていた荷物の重さでバランスを崩し、激流に落ちそうになった。あれが私なら、体勢を立て直すことが出来ずに、そのまま流されてしまっていただろう。思わず身が引き締まる。こんなところで川に流されて行方不明になるのは、まっぴらごめんだ。

ポーターたちが担いでいる荷物は、食糧袋の大きさの違いによって、重い軽いの不公平がある。そんな時、彼らは、山道の途中で休憩すると、ジャンケンして荷物を交換している。
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