キルスの祖母・キム・チュノクさんは「子どもたちを死の地から救い出してください」と書いたプラカードを準備して北京のUNHCR事務所に入った。(撮影:石丸次郎)

キルスの祖母・キム・チュノクさんは「子どもたちを死の地から救い出してください」と書いたプラカードを準備して北京のUNHCR事務所に入った。(撮影:石丸次郎)

 

「アポイントはとってあるのですか?」
「アポイントはとってあるのですか?」
もちろん駆け込み・籠城にアポイントなどできるはずがない。が、リーダーの文氏は、
「はい、もちろん。さあ、代表を呼んでもらおうかな」

そして、そう言うとくるりと振り向き、まだ事情がよく飲み込めず、こわばった表情のまま立ちすくんでいる7人の難民一家の方を向いて言った。
「さあ皆さん、ここが国連の事務所です。安心しなさい。これで、あなたたちは助かりましたよ」

この言葉を聞くと、それまで凍ったように固まっていた7人の表情がみるみる解けはじめた。
当初UNHCRの中国人職員は、事務所に入り込んだ11人のうち、いったい誰が難民で、誰がNGOの人間なのか区別がつかないようだった。事務所の中で私がビデオを回し始めてやっと、私が北朝鮮難民ではなく、ジャーナリストだと気づいたようだ。

コリン・ミッチェルという豪州人の北京事務所代表は、すぐさま私に退去を命じた。
後で共同記者会見をするからその時に来いというのだ。責任者に退去を求められた以上、私が一緒に「籠城」するわけには行かない。
私はキルス一家一人一人と「ソウルで会いましょう」と固く握手をして、事務所を離れた。

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