茂山郡で4月30日、住民たちが農場用の肥料を強奪
化学肥料の慢性的な不足が伝えられる北朝鮮で、農繁期を迎えた4月に入っても農場などに肥料が十分に供給されず、問題が生じているようだ。北朝鮮の北部、咸鏡北道茂山(ムサン)郡で4月30日、農場に運搬する肥料を住民たちが集団で強奪する事件が発生したと、北朝鮮内部の通信員が電話で伝えてきた。

5月に入って通話した通信員は、30日夜、近郊の協同農場に運ぶための化学肥料を積み、茂山駅前を出発した10トントラック2台を、付近の住民40人余りが集まって止め、肥料を強奪するのを直接目撃したという。

トラックには保安員(警察官)が同乗しており住民の行動を制止しようとしたが、逆に住民たちはトラックに石を投げつけ、保安員たちが降りられないようにして肥料を奪おうとしたという。たまりかねた保安員は空に向けて威嚇射撃を数発発射し、ようやく騒ぎは収まったが、少なくない肥料が奪われたという。

北朝鮮での肥料不足は今に始まったことではなく4月頃になると例年のように伝えられてきた。田畑に4月から5月にかけて十分な肥料を入れない場合、秋の収穫が大幅に減少する。このため、肥料の量によって協同農場の場合にはその年のノルマ達成の可否が、個人が傾斜地などを勝手に耕す「小土地」の場合には、個人収入の多寡が決まることになる。この時期の肥料の確保は北朝鮮社会にとって極めて重要な問題となってくる。

肥料問題の深刻さを裏付ける映像取材を、北朝鮮内部情報誌「リムジンガン」のリ・ジュン記者が05年6月平安南道でしている。撮影されたのは南興(ナム ン)青年化学連合企業所の肥料積み替え場。生産された化学肥料は、列車からトラックに移し替えられて各地に運ばれていくのだが、その際にこぼれ落ちる肥料 に、軍人を含む数百人の住民が群がり、必死になってかき集める姿が映し出されていた。肥料が北朝鮮の人々にとってどれほど貴重な品であるかを物語ってい る。
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