「長吉図開発先導区」との兼ね合い
中国は2009年8月30日、「長吉図(長春-吉林-図們江)開放先導区」と呼ばれる開発計画を国家級のプロジェクトとして採択した。これは吉林省の産業の中心である長春市、吉林市から東の図們江(豆満江)河口までをひとつの経済圏にまとめ、中国東北部の経済を活性化させようとするものだ。豊富な資源と産業基盤があるものの、南部の沿海地区などと比べ発展の遅れた東北地方を、国家レベルで再開発するという強い意志が見て取れる。

「長吉図開発先導区」における開発予定地域。約2万4000平方キロにおよぶ広大な地域だ。延辺朝鮮族自治州の全域も含まれている。

 

中国は日本海に出口を持たず、北朝鮮も長く半ば鎖国状態であるため、東北三省、特に南に数百キロにわたり北朝鮮と国境を面する吉林省は、「辺境のどん詰まり」になってしまっていた。人もモノも出入りが盛んではない。そうした状況を打開するのがこの「長吉図」計画の核心だ。成功するためのカギは吉林省の生産物と世界をつなぐ、東の日本海の出口の確保である。その海への出口は北朝鮮にある。

図們江(豆満江)河口に最も近い、延辺朝鮮族自治州の琿春市から南にわずか60キロだけ下れば北朝鮮の羅先(ラソン)市にある羅津(ラジン)港がある。この港を利用しようというのが中国の思惑だ。羅津を使えれば、現在中国東北地方の海の玄関として利用されている西の大連港へと品物を運ぶ際と比べ、半分以下の輸送距離で済む。中国は2008年、3つの埠頭を持ち、冬でも凍らない羅津港の使用権の一部を10年間確保する合意(20年に延長交渉中だという)を北朝鮮との間で締結している。

羅津港。羅津市と先鋒(ソンボン)郡は1991年に自由貿易地帯に指定されたが、北朝鮮側の曖昧な責任所在に起因する高い投資リスクが嫌われ、開発は低調に終わっていた。今は観光地として、韓国人を除いた外国人に開放されている。2008年9月 撮影:朴永民 ©アジアプレス

次のページ:中国の長吉図プロジェクトに呼応するように...

★新着記事