人と土地、資源だけが残った
こうした状況と前後し、北朝鮮政府は苦肉の策ともいえる手を打っていく。2010年になって外資の誘致に力を入れ始めたのだ。1月には「朝鮮大豊国際投資グループ」を再活性化させ、3月には「国家開発銀行」を設立、国際社会へと通じる窓口を整備した。また、4月には北朝鮮の南浦、元山、新義州、羅先など8つの都市を経済特区に指定、今後5年間で1200億ドル以上を投資し、経済再建に乗り出すと「国家開発銀行」の朴チョルス総裁が発表した。

「国家開発銀行」の設立要旨は、国内の土地資源を担保に海外から100億ドルの投資金を集め、それを資本金に国内のインフラ整備や資源開発を振興させる、というものだ。北朝鮮政府は他にも、中朝国境の川・鴨緑江の河口地域の中州の開発権を8億ドルで50年間、中国企業に譲渡するなどのプロジェクトを推進しているという。

これらの内容はつまり、北朝鮮の土地と資源、そして労働力を切り売りして、手っ取り早く現金収入と投資を得ようというものに他ならない。交通・交易の要衝の地の開発権、使用権に加え、各種レアメタルを含む推定価値600兆円といわれる豊富な地下資源をあてにしているのだろう。また、その前提として、世界でも指折りに安い、国民の労働力を動員できるという算段が見え隠れする。
だがぶちあげられたこれらの大風呂敷も8月現在、その進展がまったく見られないままだ。北朝鮮としては、成果があれば大々的に発表するはずだが、一体どうなっているのだろうか(つづく)

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