「韓国の伝統酒、マッコリのすべてを一週間で勉強する『マッコリ講座』を東京で開きたい。いま、日本でのパートナーを探しています」
先月、韓国のネット新聞社の知人からこんなメールが届いた。新聞社は収入源としてカルチャー講座を運営しているが、いま、「マッコリ講座」一番人気なのだという。

昨年、サムスン経済研究所が発表する「ベストヒットランキング」で堂々の第一位に輝いたのが「マッコリ」だった。バンクーバー五輪フィギュアスケートで金メダルを獲得した「国民の妹」キム・ヨナ選手はランキング3位。韓国でのマッコリパワーを感じさせる。

白く濁ったマッコリは、口に含むと独特の酸味がいつぱいに広がる。 ときにねっとり、そしてざらざらさえするような口当たりが芳酸な味わいを醸しだす。のどごしというよりも、舌触りを楽しみながら飲むという感じだろうか。
かつては韓国の酒類消費の半分以上を占めていたマッコリは、1960年代に政府が食糧米確保のためにコメの使用を規制したため、市場から駆逐される憂き目に遭った。雑穀や小麦粉のマッコリは酸味が強すぎ、二日酔いにもなるとして庶民からは次第に敬遠されるようになってしまった。

その後、90年代に入ってコメ原料のマッコリが次々と復活した。製造過程で発酵を伴い、乳酸菌が多く合まれていることから高血圧や更年期の予防・免疫強化など、健康にもいいとして見直されるようになったのだ。
ソウルのIT会社に勤めるOL金恵英(キム・ヘヨン)さんは「マッコリは低糖質でダイエット効果もあるといわれる。 最近は飲みにいくと、どの女性もマッコリを注文するほど」と女性に支持されている様子を語った。アルコール度数も5~8%ほどで、最近では「濁り」として沈殿しない上澄み部分だけを取り分けて、それにリンゴやアンズなどフルーツを加えた若者向けのマッコリ・カクテルも登場するようになった。

いまのマッコリブームは李明博(イ・ミョンパク)政権の北朝鮮政策も微妙に関係している。北朝鮮へのコメ支援が南北関係の停滞でストップし、年間80万トンのコメが倉庫に残ってしまうようになると、政府はコメの消費拡大策を導入した。そのひとつとしてこの2月、国産のコメで造られたマッコリに対して5%の酒税を半分に減税すると決定し、企業の最先端施設への投資助成補助を表明した。食品社会もコメ菓子、コメそうめん、コメラーメンなど、コメを原料にした商品の開発に力を入れ始めた。

東京の居酒屋で日本酒を選びながら「なぜ韓国は焼酎しかないのだろう」と、日本をずっと羨ましく思っていた私からすれば、マッコリの認知が広まるのはうれしい限りだ。「マッコリ」=「おやじの酒」というのはもう昔のイメージ。韓国ではいまやお酒落なマッコリパーや、独自に醸造した地酒ならぬ「地マッコリ」まで次々とできている。
昔を懐かしむ単純な復活ではなく、伝統に新たなエッセンスを融合させ発展させようとするスタイルが生まれたことは、今後も注目に値するだろう。氷上を華麗に舞うキム・ヨナ選手や浅田真央選手らの姿を見ながら、彼女たちの素晴らしい演技にマッコリで乾杯したい気分になった。
(サンデー毎日「朝鮮半島を読む」掲載記事を加筆・修正)