韓国社会に衝撃を与えた23歳の女性ホームレスの姿。「今年に入って全国でホームレスや自殺者が増えた。デノミの混乱のためだ」と撮影者の金記者は言う。 2010年6月 平安南道で金東哲（キム・ドンチョル）記者撮影
23歳の女性ホームレスの姿、衝撃映像に韓国で大きな反響
3日に韓国のKBSテレビで放映されたスペシャル番組「北朝鮮3代権力世襲、金正恩は誰なのか」の中で、北朝鮮内部情報誌「リムジンガン」の記者・金東哲（キム・ドンチョル）氏が撮影した映像が大きな反響を呼んでいる。
番組では、先の朝鮮労働党代表者会で事実上の後継指名された金正恩氏にスポットを当てた。世襲後継を断行した金正日政権のもとで、一般国民の生活や意識を紹介した部分に、金記者が6月に平安南道で密かに撮影した映像が約4分使用された。
～映像再現～
映像では、畑の中をよろめきながら歩く若い女性に金記者が近づき声をかける場面から始まっている。
女性はウサギの餌になる草を集めている。
北朝鮮では、子どもがいる家庭ではウサギの飼育が義務付けられている。軍に肉や毛皮を納めるためだ。
金 ウサギにやる草かい？
Ａ 草を売るの。
金 何歳だい？
Ａ 23歳です。
金 23歳だって！
金 君は外で寝ているの？
Ａ はい。
金 何を食べているの？
Ａ 何も食べられません。
金 お父さんとお母さんはどこにいるの？
Ａ お父さんは死にました。
金 お母さんは？
Ａ お母さんも、死にました。
この女性は、昨年11月末に実施されたデノミ措置（通貨ウォンを100分の1に切り下げ）の経済混乱の中で、家族と家を失いコチェビ（ホームレス）になった、と金記者は解説する。
世襲後継の宣伝が始まる一方で、北朝鮮の庶民が過酷な暮らしを強いられている現実を生々しい映像で見て衝撃を受けたという感想が、韓国のメディアでは、論説などに数多く出されている。
金記者はアジアプレスの北朝鮮内部の取材パートナーでもある。（石丸次郎）
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