民主党(非軍政系統)の候補者が選挙カーで街中を走り回って支持を呼びかける。 ラングーン(ヤンゴン)市内 2010年10月 撮影 宇田有三

 

国連や西洋諸国、ASEAN諸国(東南アジア諸国連合)からも今回の20年ぶりの総選挙については疑問が呈せられている。民主化指導者のシンボルでもあるアウンサンスーチー氏は自宅軟禁から解放されず、さらに恣意的な法律の適用で拘束され獄中にいる政治囚は2100人を超えるともいわれているからだ。

現在のビルマ軍政(国家平和発展評議会=SPDC)は、「我が国には政治囚なるものは存在していない」と明言している。しかし、その主張も国際社会の間には大きなギャップがあると言わざるを得ない。ビルマ軍政は国を治めるのは政治家ではなく、あくまでも国軍が主導で国家運営がなされるべきだという考えを持ち続けているのだ。そのため、「選挙前からすでに結果が分かっている」と言い切る人びとが多いのも事実である。

自宅軟禁中のアウンサンスーチー氏は弁護士を通じて、今回の選挙へのボイコットを呼びかける手段をとることになった。だが、そんな中にあって、スーチー氏のような民主化活動とは一線を画して選挙に参加する非軍政系の人びとがいるのも事実である。
たとえば、スーチー氏が書記長を務めていた国民民主連盟(NLD)と袂を分かつことになった人たちは、国民民主勢力(NDF)という政党を旗揚げし、今回の選挙に参加している。また、1988年の民主化デモを率いた勢力の一つでもあった「88年世代学生グループ」も分裂し、30年近い刑期を言い渡されたリーダー格のミンコーナイン氏やココジー氏が選挙のボイコットを訴える中、選挙に参加する者も出てきた。

さらに、半世紀もの間、内線のさなかにあったシャン民族・カチン民族・カレン民族などのいわゆる七大民族の中からも、厭戦から選挙に立候補する人たちが現れた。ある民族の代表者は立候補の理由を以下のように述べた。
「今の軍政は力が強すぎる。もちろん軍政の言っていることは完全には信じられない。でも、今回の選挙で、軍政から民政へと変化を生み出す機会がほんのわずかでもあるとしたら、我々は選挙に参加すべきなのだ。一気に社会を変えることはできないのだから。」
「それに、半世紀以上続く軍政の下で、1990年の選挙からも20年が過ぎ、こんなチャンスはこれまでなかったのだから。」
この立候補者は、自らの民族名・政党名・名前・年齢など、あくまでも表に出さないという条件で、筆者のインタビューに応じてくれた。選挙に参加して、民政への移管の機会を望んでいる彼でさえ、軍政の巨大な力の前には脅えざるを得ない。
「ニューライト・オブ・ミャンマー(国営英字紙)」に掲載される政府の意向に沿った記事が連日掲載されるが、どの候補に投票するのかというよりも、選挙をボイコットしないで投票に行くようにという主張が中心になっている。選挙を棄権する人が多ければ、ようやく手に入れた民政移管への手続きが滞り、軍政が続く可能性もあると、まるで脅しのような論調である。(ラングーン 宇田有三)

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