頼りない民放テレビ、トンチンカンな大学教授
2008年の終わりごろから、マスメディアやいくつかの国の政府機関から、筆者のもとに話を聞きたいという問い合わせが数多く来るようになった。
国内各紙の社会部や外報部(国際部)、放送局、韓国と欧米のメディア、それに公安・情報関係の政府機関などである(情報機関にはついては、公開情報以外のお話しできないとお断りしている)。

この年なにがあったか?
金正日総書記が9月9日に予定されていた朝鮮労働党創建記念行事を健康悪化で欠席。しばらくして内外に「激やせ写真」が公開されたのである。
このまま金総書記は死ぬのではないか?死んだら北朝鮮はどうなるのか?「激やせ写真」が各国政府とメディアに与えた衝撃は大きかった。

小さなジャーナリストグループに所属しているに過ぎない筆者に、「大組織」から多くの問い合わせが来るようになったのも、揺らぎを見せる北朝鮮情勢を計る見立てのひとつとして聞いておこう、ということだったのだと思う。

それから二年余り。北朝鮮に、いよいよ大きな変化があるのではないかと、マスメディアはますます、そわそわ落ち着きがなくなってきているように見える。

「北朝鮮はこれからどうなるのでしょう?」こんな質問をよく受けるのだが、それが簡単にわかれば苦労しません。私の方が訊きたいぐらいである。
こんな話を、某放送局の敏腕デスクのY氏にしたところ面白い解説をしてくれた。
曰く「マスメディアの習性として、『ネタ落ち』の恐怖がある。北朝鮮情勢が混沌とし始めた今、特ダネを取るよりも自社だけ取材ができない『ネタ落ち』の方が怖いんです。でも各社とも北朝鮮内部がどうなっているかなんて取材したことがないから、どこで何をしたらいいのかさっぱりわからず右往左往しているんですよ」
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