第2回 検察の捜査を検証するなかでの3つの疑問

板橋洋佳(いたばし・ひろよし)朝日新聞大阪本社 社会グループ記者(2011年5月10日付で東京本社社会グループ記者)

板橋洋佳(いたばし・ひろよし)朝日新聞大阪本社 社会グループ記者(2011年5月10日付で東京本社社会グループ記者)

(板橋)
取材する際、3つ、テーマを念頭においていました。
1つ目は、フロッピーディスクをめぐっての検察の主張と客観証拠のズレです。
公判で、虚偽公文書作成の証拠として出されたフロッピーディスクの最終更新日時は、2004年6月1日未明となっていました。

ところが、虚偽公文書の作成が6月1日未明だとすると、6月上旬に村木さんから上村さんに虚偽証明書作成の指示があったという検察側の主張と客観的な証拠が矛盾してしまいます。

それを見つけた弁護団から、この矛盾をどう説明するのかという話が公判で出ていたのです。
そこで私は、捜査の見立てと矛盾するフロッピーディスクを、特捜部は当時どのように考えていたのか、矛盾するのをわかっていながら、なぜ事件化に踏み切ったのか、あるいは、フロッピーディスクのデータをどういうふうに特捜部が解釈したのか、を1つ目の取材テーマにしました。
それを解明すれば、先程の一歩先の話になると考えました。

2つ目は、証明書発行の口利きをしたとされる国会議員の口利き当日の行動を確認していなかったということです。
検察のストーリーによると、自称障害者団体が厚労省に虚偽証明書を出して下さいとお願いするときに、国会議員が絡んでいました。
その議員が、自称障害者団体から依頼を受けて、厚労省の村木さんの上司の部長に、「知り合いの団体が証明書を欲しがっているからよろしく」と依頼し、部下の村木さんが指示をしたという構図でした。

しかし、その議員が自称障害者団体から依頼を受けたとされる日、議員は千葉県にゴルフに行っていたということを弁護側が公判で明らかにするわけです。そして、その議員に対する検察の任意聴取が、村木さんの起訴後にされていることも公判で明らかになりました。

つまり、村木さんを逮捕して起訴した後に、事件の入口となる議員の任意の聴取をしているのです。さらに特捜部はこの段階でも、ゴルフに行っていたことを確認していないのです。弁護団は裏付け捜査の甘さではないか、と公判で主張していました。

私は、国会議員の任意聴取を、村木さんを起訴した後に先送りした理由、つまり特捜部の判断を探れば、弁護団の主張の一歩先の話になると考えました。そして、これを2つ目のテーマに掲げました。
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