◆昨年10月に新方針...動画撮影、メモリーカード装着不可

(取材=キム・ドンチョル 整理=リ・ジンス)

手帳をめくりながら携帯電話を使う男性。場所は平壌市の中心部、背後に凱旋門が見える。(2011年6月牡丹峰(モランボン)区域 ク・グァンホ撮影)

手帳をめくりながら携帯電話を使う男性。場所は平壌市の中心部、背後に凱旋門が見える。(2011年6月牡丹峰(モランボン)区域 ク・グァンホ撮影)

 

北朝鮮当局が、普及が進む携帯電話に新システムを導入し、動画の撮影や情報の拡散につながる機能をなくすなど、昨年10月以降、新たな統制に乗り出していたことが分かった。北朝鮮国内で取材を続ける、北朝鮮情報誌「リムジンガン」の金東哲(キム・ドンチョル)記者が先日伝えた。

人口約2000万人の北朝鮮では、08年1月にエジプトの通信会社「オラスコム」の投資を受けて合弁会社「コリョ(高麗)リンク」が設立され、同年12月から公式に携帯電話サービスが始まった。「オラスコム」社が今年2月に発表したところによると、11年12月には利用者が100万人を突破した。主な利用者は、商売人の他、党・軍の幹部や貿易会社の社員などの富裕層だ。また、最近では大学生の間でも急速に広がっており、北朝鮮では誰もが憧れる品の一つになっている。

キム記者は六月に平壌市内で「オラスコム」社の販売担当者などに取材。当局が携帯電話網に新たなシステム導入を図ったことが明らかになった。

北朝鮮の携帯電話番号は10桁で構成されるが、前4桁は基本的にすべて、故金日成主席の生年にちなんだ「1912」が付与されていた。しかし、登録数が100万台に達し下6桁が埋まったことから、「新番号として『1913』が付与されることが昨年10月に決められた」と金記者は言う。そして、この「1913」の新番号が与えられる携帯電話端末に対して、新たな統制措置が加えられるようになったのだ。

今回、キム記者が伝えて来た措置の概要は次のようなものだ。
(1)登録した地域でしか通話をできなくした。他地域に持ち込んだ端末は、一定期間が過ぎると強制的に遮断される

(2)端末の記録容量を10~20メガ程度に大幅に減らした。またマイクロSDカードの使用をできなくした。。これにより写真・動画など大容量のファイルを端末に保存したり複写することが困難になった。

(3)動画を再生する機能を端末から削除した

(4)データを端末間で無線でやり取りできるブルートゥース(bluetooth)と呼ばれる機能を無効化した。これにより、動画や音楽、文書などのファイルを端末を介して移動、共有するこができなくなった。

「1912」で始まる携帯端末は、写真や動画の撮影やメッセンジャー機能があり、SDカードへのデータ保存も可能だった。このため、主に中国から流入した韓国のテレビ番組などの外部情報が、携帯端末を媒介にして国内に拡散したり、逆に携帯端末で撮影された画像が国外に流出したりと、携帯電話が情報流通の道具として使われるようになっていた。
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