「イラク軍、警察の腐敗がすすみ、情報が武装勢力へ筒抜けになっている」と危惧するアサイシ(クルド治安機関)のアサッド・ジェラル中佐(45)。(2013年4月5日撮影:玉本英子)

 

マリキ首相は昨年7月、直属の部隊による作戦、ディジレオペレーション(チグリス川作戦)をスンニ派武装勢力が活発に活動するキルクーク南部や隣のディアラ県、セラハディン県で敢行した。現在、武装勢力掃討作戦が目的とされるが、強力な権限が付与され、司法手続きもあいまいで、拷問も横行するという。スンニ派が多くを占める地域の住民の反発は大きい。

修理工のオスマンさんは、「サダムフセインはいなくなったが、他のサダムがいくつも現れた。アメリカはどこへ行ったのか。誰も私たちを助けてくれない」と訴える。

「いつになったら平和で安心できる街になるのでしょうか。民族がなかよく暮らすことはもうできないのでしょうか...」。そう語りかけるオスマンさんに、私は答えることができなかった。
逃げ場のない住民は、この恐怖と不安のなかでいまも暮らしている。
【キルクーク 玉本英子】

【キルクーク】
クルド人、アラブ人(スンニ派、シーア派)、トルコ系トルコマン、キリスト教徒(アッシリア人、カルデア人)などが混住するイラク北部の都市。キルクーク大油田はイラク最大級の油田のひとつ。もともとはクルド人が多数を占めていたが、旧フセイン政権時代にクルド人移住政策が進められ、南部のアラブ人を移住させてきて人口比を強制的に変える政策がとられた。現在、キルクークをめぐっては、クルディスタン地域政府への編入問題が議論されているが、産出される原油の分配問題もあり、マリキ首相をはじめとする中央政府は強硬に反対している。

 

<<< 第4回  │  第6回 >>>

<玉本英子のイラク報告>6 旧政権の強制移住政策の爪痕いまも
<玉本英子のイラク報告>5 キルクーク・治安悪化に募る住民の不安
<玉本英子のイラク報告>4 キリスト教徒の通訳の家で
<玉本英子のイラク報告>3 治安改善の北部にシリア難民の姿
<玉本英子のイラク報告>2 平和を願うダンス大会に6000人
<玉本英子のイラク報告>1 自爆攻撃の犠牲者家族を訪ねて(全6回)

★新着記事