現在、シリア北部地域には、政府軍と反体制派の自由シリア軍との戦闘から逃げてきた避難民が急増している。
中部から北部にまたがるラッカ県から、北東部のハサカ県に逃げてきたワゴンカーの女性たちと出会った。自由シリア軍がラッカ市を制圧したため、政府軍が空爆をはじめたという。

大学生のエヴィンさん(22)は「アサド政権はもちろん嫌です。でも、私たちはこれを強制されたくないの」と頭にスカーフをするしぐさをした。シリアは国民の8割以上がイスラム教徒だが、頭をスカーフで覆わない女性も多い。エヴィンさんはイスラム教の影響の強い自由シリア軍が、女性たちに厳しい戒律を強制するのではないか、と恐れていた。

ワゴンカーはトルコ国境沿いを走ってきたという。途中で通った町では着のみ着のままで逃げてきた人びとが、泊まるところもなく路上で寝ていたと、エヴィンさんは話す。
「どの勢力も、市民の命なんて考えずに、自分たちのことばかり。今のシリアに正義なんてない」
彼女は内戦で苦境に追いやられた市民の思いを語った。

写真を撮って、と言われ、カメラを向けると、女性たちは笑顔になった。
「暗い顔をしていたら本当につらくなる。私はまだ希望を捨てたくない」
エヴィンさんはそう言い残し、ワゴンカーは走り去った。
【シリア・ハサカ県カミシュリ 玉本英子】

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