クルド人女性(写真)は戦闘中、自由シリア軍に家を追い出された。戦闘が収まり、家に戻ると、貴重品はすべて盗まれ、家の門や壁、部屋の中も銃弾のあとだらけだった。(シリア・ハサカ県ラアス・アルアイン 3月下旬 撮影:玉本英子)

 

ハサカ県西部、トルコとの国境の町、ラアス・アルアイン(クルド名:セレカニエ)に入った。この町では、昨年11月から、クルド組織、人民防衛隊(YPG)と自由シリア軍とのあいだで大規模な戦闘がおこなわれ、3か月で数百人の死傷者が出た。

自由シリア軍が、シリア政府軍に攻勢をかけ、町を占拠したことが、そもそものきっかけだった。
ラアス・アルアインは人口3万ほどの町で、クルド人、キリスト教徒が多数を占め、アラブ人は少数だ。ほとんどがアラブ人からなる自由シリア軍による町の支配に市民は大きく反発、地元のクルド人たちが大規模な反対デモをおこなった。自由シリア軍は、そのデモ隊に発砲、市民に暴行を加えたのだった。

これに対し、YPGはクルド人防衛を名目に、自由シリア軍へ攻撃を開始した。およそ3か月にわたる戦闘で、自由シリア軍は敗退、2月末、停戦合意が交わされた。現在、町の南地区をYPGが、北地区を自由シリア軍が支配する状態だが、緊張は続いている。

町ではYPGと自由シリア軍の市街戦が繰り広げられ、3か月で数百人が死傷した。戦闘で破壊され、無人になった地区。停戦合意は交わされたが、いまも双方のにらみ合いは続く。(ハサカ県ラアス・アルアイン 3月下旬 撮影:玉本英子)

 

町の中心部は、どの建物にも無数の弾痕が残っていた。クルド人の女性(写真)は戦闘がはじまった時、自由シリア軍に家を追い出された。戦闘が終わり家へ戻ると、壁や部屋の中は銃弾のあとだらけで、貴重品はすべて盗まれていたという。
「シリア政府とは関係のない戦闘で、たくさんの人が死んだ。彼らが何の目的で戦っていたのか分からない」
と女性は話した。
【ハサカ県ラアス・アルアイン 3月下旬 玉本英子】

 

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