「私はアサド政権を支持していないのに、キリスト教徒というだけですべてを破壊された」と話すジョージさん。自由シリア軍の一部勢力が、キリスト教徒すべてを敵とみなし、攻撃しているのだという。(シリア・ハサカ県 ラアス・アルアイン 撮影:玉本英子)

 

ハサカ県西部の町、ラアス・アルアインでは、昨年11月から3か月にわたり、クルド人組織の人民防衛隊(YPG)と自由シリア軍とのあいだで激しい戦闘が繰り広げられた。町を歩くと、どの建物にも無数の弾痕が残っていた。

最も被害が大きかったのが、キリスト教徒地区だ。教会の屋根の十字架は吹き飛び、周辺のアパートも破壊され廃墟と化していた。建物の壁にはYPGの文字やイスラム教のコーランの言葉などがスプレーで書きなぐられていた。 がれきを撤去していた男性たちに声をかけると「自由シリア軍にやられた」と口々に言う。
ジョージ・アブドゥルラハッドさん(58)の部屋は、下の階に仕掛けられた爆弾が爆発した衝撃で床石が跳ね上がり、すべてが粉々になっていた。

「自由シリア軍は私たちキリスト教徒を抹殺するつもりだ」と話す。
シリアのキリスト教徒は人口の一割を占める。多くが世俗主義のアサド政権を支持してきたため、自由シリア軍内の一部勢力がキリスト教徒を敵とみなし始めたという。地区に暮らしていた300世帯のほとんどはすでに町を去った。
「昔の町にはもう戻れない。政権が崩壊しても、新たな対立や抗争が起きるだけ」
そう言ってジョージさんはうなだれた。
【シリア・ハサカ県ラアス・アルアイン 3月下旬 玉本英子】

 

<<< クルド組織YPGと自由シリア軍の激戦地へ:第21回 │ 第23回:アルヌスラ戦線支部リーダーと接触「いつでも自爆できる」 >>>

連載記事一覧

【1】 【2】 【3】【4】 【5】 【6】【7】 【8】 【9】【10】
【11】【12】【13】【14】【15】【16】【17】【18】【19】【20】
【21】【22】【23】【24】【25】【26】【27】【28】【29】【30】
【31】【32】【33】【34】【35】【36】【37】【38】【39】【40】
【41】【42】【43】【44】【45】【46】

★新着記事