トルコ東北部のトラブゾン県チャンブルヌに建設されたゴミ処分場からの悪臭に鼻をふさいで歩く住民(映画『トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~』より)

生ゴミに混ざって転がる血液がべったり付着した点滴チューブや注射器といった感染性医療廃棄物、有害な重金属や化学物質を含有するだろう電子機器、どこかの工場が出所と思われる真っ黒い汚泥──。ありとあらゆる廃棄物がいっしょくたにされて築かれたゴミ山には、そこから発生するメタンガスや有害な硫化水素ガス対策のためのガス抜き管が突き刺さっている。

これが現在公開中のドキュメンタリー映画『トラブゾン狂想曲~小さな村の大きなゴミ騒動~』の舞台となった、トルコ東北部の黒海沿岸のトラブゾン県チャンブルヌにおけるゴミ処分場の風景である。

それは一昔前によくみた日本国内のゴミ処分場のごく当たり前の光景でもある。正直、処分場の映像だけみれば、日本のそれと見分けがつかないほどだ。よくある地方のゴミ処分場といったところである。

トルコ東北部のトラブゾン県チャンブルヌに建設されたゴミ処分場のようす(映画『トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~』より)

本作はゴミ処分場の建設後に起こるトラブルをめぐる「狂騒」について、おもに住民の視点から丹念に追ったものだ。そこで描かれている住民の苦悩はゴミ問題でつねに起こる普遍的なものである。

廃棄物処理施設が未整備だったトルコの黒海沿岸では、90年代まで自治体が収集した家庭ゴミは河川や海に捨てることが慣習だったという。しかし人口の増加や、家庭ゴミに含まれるプラスチックなど、簡単に分解しないモノが増えるにつれて環境汚染が顕著になったのだろう。

それは観光にとって重要な黒海沿岸の海岸線を汚染して、行政は対策を迫られる。それで地域のゴミを1カ所に集めて埋め立てる大規模な処分場の建設を計画した。その建設地となったのがチャンブルヌの銅鉱山跡地だった。

この立地からして日本そっくりだ。都市部がゴミ処理に困ったため、その捨て場を人口密集率の少ない農村部に押しつける。農村部側でその立地を問題にしても、同じ県では少数派でしかない農村部の意見は無視されてしまう。

それに地域ごとにバラバラにそれまで処理(といっても河川などに埋めていただけだったようだが)されていたゴミの処理を大規模化して1カ所に集めるという手法、これも日本で90年代以降に問題になった「ゴミの広域処理」とよく似ている。

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