◇除染は幻想「移染」に過ぎない
一般の人々が一年間に浴びることが許容される法定の被曝量は、福島第一原発事故直後に1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げられた。このことに代表されるように、福島では、事故前に定められた法定基準が既に用をなさなくなっているのは明白だ。京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんに、今の現場の実情、除染作業の実態について聞いた。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◇「もう法律など守っていられない」
ラジオフォーラム(以下R):「農業用水に汚染水340トン 原子力機構が計画了承」というニュースが共同通信から7月12日に報じられました。福島県南相馬市で生じた汚染水340トンを農業用水に使う川に流していたというものです。原子力機構が設けた放射性セシウム管理基準が1リットル当たり最大90ベクレル以下ですが、実際にはそれを上回る100から121ベクレルが60トン含まれていて、流出した放射性物質の総量は1600万ベクレルということです。これは一体どういうことなのでしょう。

小出:1リットル当たり最大90ベクレルという値は、いわゆる国の法律に書かれている値でして、それ以上の濃度の廃液であれば事業所から出してはいけない、というものです。ですから、日本の企業であるとか、いわゆる研究所とかそういうところが動くためには必ずこの基準だけは守らなければならない値なのですけども、それを上回っているような廃液を流し、そのことを原子力機構も承知していたということです。

R:最大90ベクレル以下というのは昔から決まっていたのですか?

小出:歴史的に言えば数字は細かくは変わっていますけれども、かなり前からセシウム137に関しては1リットル当たり90ベクレルという数字は、20年、30年ぐらいは続いていると思います。

R:この基準で汚染水の処理をしていくには、もうキャパシティを超えてしまっている。それでも捨てざるをえないという状況になっているのですか?

小出:多分そうです。(福島第一原発の事故によって)大量の放射性物質がすでに放出され、大地全部が猛烈に汚れているのです。それを全てこれまでの法律の下で管理することはもうできなくなっているわけです。被曝量でいえば、普通の方は1年間に1ミリシーベルトというのがこれまでの法律だったのですけど、そんなものはもう守れない、ということで1年間に20ミリシーベルトまでのところには人が住んでもいい、というように日本の政府が言っているのですね。
廃液中の濃度も、実質的にはもう守れない。日本原子力機構もそのことを十分に承知しているので、これまでの法律なんか到底守っていられないよ、ということになったのだと思います。

R:除染を行う際の、高圧洗浄などで出た水はどうしているのですか。

小出:本当は集めると言っているのですね。高圧洗浄で使った水はそのまま流してはいけない、それをちゃんと集めなさい、ということになっている。けれども、そんなことをやっていたら到底仕事にならないし、お金もかかってしまうので、じゃーじゃー流してしまうということをこれまでもやってきたわけです。汚染物を川に蹴り落とすということが前にも朝日新聞に載っていましたけれども、もう多分日常的にやっていると思います。

R:やらざるを得ないのですね。

小出:はい。現場の作業でいえば、そんなに一つ一つ排水を貯めるとか、汚染物をきちっと梱包して保管するというのは実際上、たぶんできない、と現場では思っているのではないでしょうか。
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