◇除染とは「移染」。幻想にしか過ぎない
R:除染は、幻想というかフィクションに近いのではないですか?

小出:おっしゃる通りです。除染というのは汚れを除く、と書くわけですけれども、汚れと私たちが呼んでいるのは、もともと消すことなど出来ない放射能なわけで、言葉の本来の意味で言えば除染は出来ないのです。

R:除染は「移染」だと、前におしゃっていましたね。

小出:そうです。汚れを移動させることしか私たちには出来ないのですけれども、移動のためのお金が膨大になりすぎて、もうそこら中にとにかく流してしまえ、ということになっているのです。

R:除染に意味はありますか?

小出:私は除染には反対なのです。一番やらなければならないのは、汚染地域の人々を逃がすということなのであって、汚染地域を除染できると言うことそのものが間違えていると思います。ただ、この除染というのは、除染ビジネスになっています。これまで原子力を進めてきたゼネコンなどは、原子力発電所を作ることで儲けてきたわけですが、事故を起こしたら今度は除染ビジネスで儲けるということをやっているのです。

R:これは国がかなりの税金を投じているわけですよね。

小出:これまでもう何千億円というお金を確か費やしたと思います。2011年、12年で合わせると、数千億円に達していると思います。

R:12年度の国の除染費用は3700億円となっています。農業用水で流した水はどこへいくのか分からないわけですよね?

小出:まあ、川を通って農業用水にも使われながら、最終的には海へ行くことになります。

R:その間に、地下にも流れ込むわけですよね。

小出:もちろんです。田畑等を汚しながら地下に潜って、あるところでは地下水を汚して、最終的には海に行くのだと思います。

R:それはまた、再汚染を進めているということでもあるわけですね。

小出:そうですね。もともと環境というのは全てつながっているわけで、汚染した場所から汚染していない場所に移動することもあるわけですし、簡単に汚染を食い止めることなどはもともと出来ないのです。
チェルノブイリでも除染を諦めなくてはいけない地域があった。ましてや日本では、台風や多雨などによって、除染した場所がすぐにまた汚染されてしまうという実態が明らかになりつつある。汚染地域の人々の健康を第一と考えるなら、そこに住む人々をまず退避させることが何より優先されるべき政策ではないだろうか。

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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