(参考写真)中国側から咸鏡北道茂山(ムサン)郡を臨む。人口10万を超える国境都市だ。間を流れる川は豆満江。郡のほとんどの地域で中国キャリアの携帯電話が使用可能なため、国内情報流出の一大拠点となっており、北朝鮮当局も妨害電波を発信するなど、し烈な情報戦が繰り広げられている。2012年7月 アジアプレス撮影(アジアプレス)

(参考写真)中国側から咸鏡北道茂山(ムサン)郡を臨む。人口10万を超える国境都市だ。間を流れる川は豆満江。郡のほとんどの地域で中国キャリアの携帯電話が使用可能なため、国内情報流出の一大拠点となっており、北朝鮮当局も妨害電波を発信するなど、し烈な情報戦が繰り広げられている。2012年7月 アジアプレス撮影(アジアプレス)

◇金正恩氏については「度胸がある」との見方も

北朝鮮当局が張成沢国防委副委員長の逮捕を公式に発表した9日以降、国営メディアでは今回の粛清の正当性を繰り返し説明し、張氏を強く非難する市民の声を伝える一方、金正恩第1書記に対する忠誠を督励する文章を載せるなど、住民の動揺を最小限に留めようとする努力が透けて見える。

だが、こうした当局の姿勢にも関わらず、住民の間には動揺が広がる様子が見て取れると、北朝鮮内部の取材協力者が伝えてきた。
咸鏡北道の国境都市に住む取材協力者は10日、アジアプレスとの通話で「現在、夕方5時と8時の報道を通じて、張成沢が会議(政治局拡大会議)の席で逮捕される姿を繰り返し流している」と現地の様子を伝えた上で、住民の声をこう紹介した。

「様々な声が聞かれますが、中でも多いのが『張成沢はそれでも慶姫同志(故金正日総書記の妹の金慶姫党軽工業部長を指す)の夫じゃないか』という声です。『張成沢が逮捕に至る状況になるまで、慶姫同志が分からなかったはずがない』というのです。『張成沢一党をみな粛清した』という報道に接しては、『そうなると慶姫同志はどうなるのか』と心配する住民もいますね」。

さらに
「『金正恩同志は歳も若いのに、どうやって叔父を粛清できるのか、度胸がある。断固とした態度なので、周囲の幹部も震え上がっているだろう』という声も耳にします」
とも語る。

北朝鮮では現在、アジアプレスで先日報じた通り、全住民に対し張成沢氏との写真を破棄し、今回の粛清を受けての反省文を提出するよう強制している。
張成沢氏という「最大級の権力者」が粛清されたことを受け、金正恩政権に対する住民意識が今後、どう変わっていくのかが注目される。
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